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extra32 宮地嶽神社と安曇磯羅 ⑫ “未来の宮地嶽神社参拝者のために”

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extra32 宮地嶽神社と安曇磯羅 ⑫ “未来の宮地嶽神社参拝者のために”

20150228

久留米地名研究会(神社考古学研究班) 古川 清久


宮地嶽神社は、今なお、九州でも二番目に多い参拝客が訪れる神社として知られています。

 一方、神社に何かを求めて訪れる若い人が増えている事も確かです。


無題.png

20111022日「筑紫舞」


し かし、多くの神社を巡る若者が増えているとしても、正月の三社詣や真剣にお願いするとなると、やはり、自分達の父祖の代から培われた一族の記憶の様なもの が働き、亡くなったおばあちゃんが自分の安産を願って何度も通った神社とか、南方に出征する前におじいちゃんとおばあちゃんと二人で武運長久を願って参詣 に訪れた神社といったものに自然とその足は向かうものです。

 一般の人が神社への足が遠のいたと言われて久しいのですが、逆に、社会の変化が速過ぎ、将来が全く見通せなくなればなるほどその傾向も強まり、やはり、父祖の代から崇拝し願ってきた神社へと頼ろうとするとも言えるでしょう。

 宮地嶽神社について以前から思っていたことを述べたいと思います。

私 は、佐賀県の西方にある小都市に住んでいたのですが、子供のころから「宮地嶽神社」というお守りの存在が不思議でなりませんでした。バスに乗っても、タク シーに乗っても、トラックに乗っても、何故か「地獄」(もちろん違うのですが)と書かれた神社の御札が運転席に置かれているのが不思議でした。

身近にその神社の存在が実感できなかった事から、何か特殊なしくみが背後に存在しているのではないかとさえ考えていたものでした。

 勿論、時代と共に、崇められ信じられる神社や寺は変わり移ろい行くものですが、一時的な流行り廃りといったものとは別に、ある種、氏族(民族)の記憶といったものに関わる基層となった信仰心というものは容易に動かすことが出来ないような気がしています。

  それは、国家の威信と民族の存亡を掛けて闘われた古代の戦いに関わるものであり、勝利者である新たな権力者に屈服し従いはしていても、それは、所詮、面従 腹背でしかなく、民衆はそれを事あるごとに何らかの形で子孫に伝え、「あの神さんは自分達の神さんじゃなか…」「あの神さんは羽振りの良かけどうちらの神 さんはこっちじゃけんこそっとお賽銭ば増やしとかんば申し訳なか…」といった伝承が永い時の流れの中では効いてくるように思えるのです。

 なぜならば、神社への参詣とは、完全に「ヤラセ」なしで行われる全員参加型「住民投票」であるからです。

 古代に於いて、民族の存亡に関わるほどの大敗北にも関わらず、その戦の先頭に立ち、雄々しく闘い散っていった先祖の霊を鎮めるべくその役目を負わされた神社がこの宮地嶽神社だったのではないかと考えるのです。

 言うまでもなく、その戦いとは一連の半島を巡る何派にも亘る戦争であり、その延長上に行われた最後の死闘が「白江戦」=「白村江の闘い」だったのです。

 一方、蒙古襲来と言われる、文永の役、弘安の役は明らかな祖国防衛戦争でした。

 その時代の迎撃のための参謀本部は愛宕神社から太宰府辺りであったと推定されているのでしょう。

一方、秀吉による文禄・慶長の役は、既に半島への足掛かりも手掛かりもない全くの外地への侵略戦争でした。ただ、その戦いは先行する蒙古襲来への報復戦争という側面も否定できません。

何故ならば、モンゴル兵は将官クラスとして一握りの指揮者が居ただけであり、江南軍は始めから戦意が乏しく、実態としては、大半朝鮮半島の軍隊が主敵だったからです。

 ここで、「白江戦」を考えると、そもそも列島の人々とは、紀元前後に中国大陸や半島から国を追われ、国を失い、土地を奪われ、命からがら追われ続けてこの列島へと辿り着いた人々だったからです。

 いわば、当時の半島は、決して、居留地や租借地(倭館)といったものではなく、現に同族が住む先祖の墓が残された古地であり、祖国回復戦争の色彩を帯びたものだったのです。

この自らの同族の救出に向かう一連の半島作戦の先頭に立ったものこそ神功皇后であり、その臣下とされる二人の子だったのです。

そもそも、子は応神天皇だけと教えられているのですが、実は、仲哀天皇死後に一緒になられた方がおられるのです。

実はそれこそが、高良大社の祭神である高良玉垂命その人なのです。

事実、高良大社に残された「高良玉垂宮神秘書」は「古事記」「日本書紀」と全く相容れない内容を持っており、「高良玉垂の命は神功皇后と夫婦なり」と書いているのです。

そして、我々神社考古学研究班の全てはその高良玉垂命とは第9代開化天皇であるという事まで知っているのですが、「記」「紀」を金科玉条の如く扱われる方は、依然、多いもので、「それは全くのデタラメだ!」と言われたい方は声高に叫ばれておられれば良いだけの話です。

地元に居ながら古代の真実に迫ることができる機会を自ら捨てておられるだけの事だと考えます。

正しくその隠された真実に封印をしておくために千数百年掛けて行われて来たのが高良大社の神宮皇后隠しであり(古くは開化天皇隠し)、宮地嶽神社の高良玉垂命隠しだったのです。

だからこそ、宮地嶽神社の最深部に置かれた古墳から多くの大王級の国宝が出土したのであり、謎の九州王朝宮廷舞と言われる「筑紫舞」が戦前まで秘かに傀儡子によって舞い続けられたのであり、その「筑紫舞」という名称も多くの先人たちの努力により「続日本紀」に書き留められてきたのです。


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筑紫舞が舞われてきた宮地嶽古墳玄室


最後に、宮地嶽神社は、古来、阿部家が神職を司ったと聞き及びます。

高良玉垂命とは異なった母方である孝元天皇の長子(大彦)の家系である阿部氏が、元はアヘ、アエ、饗(能登半島加賀屋の姉妹店あえの風は有名)の意味を持つ、大王の食事から資金まで一切を取り仕切る兵站、財務部門の長であったのではないかと思い至ります。

四道将軍として九州王朝から東北に派遣され地盤を築いた高良玉垂命=第9代開化天皇の義理の兄の大彦命(阿部氏の祖)は、後の安倍貞任をもって終りますが、一部は安東氏として十三湊で繁栄します。

また、貞任の弟である安倍宗任は大和朝廷に帰順し太宰府に送られたとされますが、後には許され、松浦党の一派を形成したとも言われます。

正しく、近畿大和朝廷占領下にあってマッカーサー宜しく送り込まれた阿部家(現安倍晋三もその流れを汲む)とは、一方に於いては九州王朝の中心的戦闘集団であったと考えられる安曇族に送り込まれた庇護者という複雑な側面を持った同族の総督だったのです。


大彦命(おおひこのみこと/おおびこのみこと、生没年不詳)は、記紀等に伝わる古代日本皇族

日本書紀』では「大彦命」、『古事記』では「大毘古命」と表記される。また稲荷山古墳出土鉄剣に見える「意富比垝」に比定する説がある。

8孝元天皇の第1皇子で、第11垂仁天皇外祖父である。また、阿倍臣(阿倍氏)を始めとする諸氏族の祖。四道将軍1で、北陸に派遣されたという。

無題.png

ウィキペディア(通説の系譜によるとしても九州王朝の四道将軍大彦命の痕跡は消せない)による


このように、阿部氏が近畿大和朝廷によって送り込まれた宗像~津屋崎~志賀~呼子(湊、田島)から遠く有明海沿岸の一帯まで、遡ること数百年の間、働き手であった多くの若者を戦闘により外地で失った敗戦国家として立ち直る途上にあったのです。

恐 らく、新生国家(新参国家)の大和朝廷と言えども、この地の経営には細心の注意と資源、人材の投入を怠らなかったはずであり(肥後にかけても道君主名は有 名)、そのような土地柄であったからこそ、ただのカモフラージュとしても帰順した安倍氏が送り込まれたのであろうと思われるのです。

それを温情と考えるか巧妙な策略だったと考えるかは、方々の立場により異なるでしょうが、近畿大和政権の前身であったと考えられる対外戦争サボタージュ派や唐、新羅内通派(これについては古田武彦氏の同調者であった中小路駿逸教 授の分析がある)から出世した新生権力に対して、敗戦後の民衆がどのような気持ちを持っていたかは言わずもがなであり、志賀から博多、そして津屋崎の一帯 の民衆は等しく犠牲となり死んでいった夫や息子を思い、また、この宮地嶽神社に対して尊崇の念抱き参拝を惜しまなかったのだろうと思うものです。

無題.pngそれこそが、現在、なお辺鄙としか言い様のない地(宮地嶽線の復活を…)に鎮座する宮地嶽神社に参拝客が絶えない理由であり、その思いは遠く古代に根ざしていたのです。

民は負けたとしても共に戦ったものを崇め、決して勝ったとしても裏切者を崇めようとはしないものです(仮にそれが誤った戦いであり嵌められた戦いであったとしてもです)。

恐 らく、宮地嶽神社に象徴される失われた祭神と、太宰府天満宮の前身と考えられる菅原道真侯の祖神(これまた隠された祭神=博多の櫛田神社の大幡主=埴安 彦=地録様…)の一族は、共に戦ったが故に、なお、崇められ続けているのです。民は自ら崇めるものを意識することなく伝え知っているのです。

そして、十三湊を拠点に最後まで抵抗した津軽の安東氏に、「高良玉垂宮神秘書」17pに「アントンイソラト申ハ…」と書かれた=安曇磯羅が投影できるとするのは許されざる思考の暴走になるでしょうか?


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