スポット192(後) 行政が引き起こした列島のヒート・アイランド化によって豪雨災害と灼熱地獄が発生した ①
20180710
太宰府地名研究会 古川 清久
雨はどうして降ってくるのか
このような表現が地球物理学的に正しいかどうかは一先ずおくとして、単なる公務員上がりの初老人間の話として聴いて頂きたいと思います。
まず、湿った大気が移動し山にぶつかることによって高空に押し上げられた水蒸気は高空の冷たい大気で冷やされ雨や氷に変わり、大半は雨となって山で降りそれが急流となって里の田畑を潤すというのが列島の伝統的な気象現象でした。
しかし、このような湿った大気が横に移動する事によって押し上げられ降ってくるばかりではなく、単に上下に移動するだけでも雨は降って来ていたのです。夕立です。
夏の炎天下で温められた水は水蒸気となって空に上がって行きます。
当然、気圧が下り断熱膨張して温度が下がり細かい水滴として上昇気流の雲の中で浮かんでいるです。
しかし、いつかは飽和し上空に留まる事ができなくなって落ちてくるのですが、それが雨となって一気に降って来るのが夕立だったのです(もはや自分でも過去形で書いているのが情けないですね…)。
これで、日中に熱せられた地表は急速に冷やされ、なんとか快適に寝られる温度となったのでした。
夕立は瞬く間に乾燥した地面に吸い取られました。昔は草むしりをしたくないからとか、蚊が湧かない様にといってコンクリートで固めたりなどされていませんでしたから、地表には土も溝(これも死語になりつつありますが)や家庭菜園があり、それなりの保水力があって実際にも地表にも水があったのでした。
翌朝、再び太陽が昇ってくると、この夕立を受け止めた広い大地から再び多くの水が水蒸気となって高空に上がって行きます。
まず、地表の水が水蒸気となって上空に上がって行く時に、地表の水を蒸気と変え地表から多くの熱を奪う事によって地表の温度を下げますし、上空に持ち上げられた水蒸気が冷やされた水となって落ちて来て地表の温度を下げることによって人々は、「ここらで一雨降らないか…」と夕立を待っていたのでした。
駆逐艦 夕立(帝国海軍は伝統的に「万葉集」なみに優雅な艦名を付けるのです)
フィリピンのリンガエン湾上陸作戦からガダルカナル島、そして第三次ソロモン海海戦まで大東亜戦の緒戦から激戦を闘い抜き最期はソロモン海で海没した白露型の4番艦
こうした水循環によって地表の水は空と往復し、同時に熱循環が起こり、室温40~45℃などといった気違いじみた部屋で独居老人が孤独死する事など全くなかったのが江戸、大阪の町屋の風景だったのです。
一方、村では方々に堀が残り、ゴミなど一切ない(あったとしてもプラスチックではないため自然に分解するものだったのです)美しい水路が張り巡らされメダカやタガメなど多くの水棲生物がいたのでした。
勿論、山も戦前までは人工林地は非常に限られた地域に管理された一部の杣山だけがあっただけで、大半は広葉樹の森が広がっていました。このため日本の山は多くの水を含んで保水力が豊かであったことからその面積の大きさからも全体としての列島の気候を穏やかに保っていたのでした。
こうして、この最も暑い時期には田んぼには水が入れられており、夕立の材料となる水はふんだんにあることから、毎夕方決まって雨が降って来たのでした。
このように海辺も街も村も山も間断なく穏やかな雨が降る事によって美しい風土と穏やかな気候と豊かな人情と国土が保たれていたのでした。
簡略化して言えば夏のカンカン照りは地表の水を上空に運び、再び夕立として地表に戻し、翌朝、新たに雲(夏の場合は入道雲ですが)となるという水のキャッチ・ボールのような循環によって、実は同時に熱のキャッチ・ボールも行なわれていたのでした。
この機能を戦後70年掛かって徹底的に破壊したのが国土交通省であり農林水産省だったのです。
そして、一層問題なのは二組織ともこの重要な事実に全く気付いていない事なのです。
勿論、いくら頭の悪い土木系とは言いながらも、高級官庁には賢い人間もいるのですから、当然にも知っていて口を噤んでいる人もいるはずでしょう。しかし、本当の事を口走ろうものなら、当然にも出世が出来なくなるとか、天下り先にも煙たがられるだろうからと口を噤んでいるはずで、組織だった発言、評価に至らないために表面的には気付いていないとしか言えないのです。
つまり、大東亜戦末期に“本当は連戦連敗”と言えなかったと同じ構造の空気に支配されているのです。
都市部は当然ながら農村地帯から山岳地帯まで保水力が事実上存在しない国土と化しているという事実については前述の三本を読んで頂くなりする事にしますが、一応、概略だけを述べておきましょう。
① 都市部のヒート・アイランド
まず、都市部ですが、昔の河川は表面が覆われているのは橋の下だけで、今の様に全面伏流化した暗渠になっているような事はありませんでした。
その上に重要なのは、炊事から風呂場に至るまでほとんどの水が下水道とか大型地下水道として浄水場はおろか海に直接捨てられることによって地表には事実上水が消えてしまっていることなのです。
僅かに残された公園も管理が簡単なコンクリートで固められたヨーロッパ式(風)の庭園と化し殆ど水はありません。
仮に雨が降ったとしても三面張りの水路でたちどころに地下(下水道の意味)に吸い込まれ、土の地面は鎮守の森に僅かに残された猫の額ほどの小さなものしかなく、ラーメン屋の駐車場から大店舗の駐車場までもがアスファルトで固められ地表に水がある所を探すのが非常に難しいのです。
もしあるとしたら、小泉竹中改革によって国民所得が半減させられ、瞬く間に後進国並みとなってしまった結果、低開発国並みの比較的安い(OECD最下位の一人当たり国民所得)観光地として多くの外国人が押し寄せる事となった結果、韓国人と中国人と在日が立小便する程度しか地表に水が存在しなくなっている事なのです(こいつらは京都の御所や寺や神社でさえ立小便する)。
熱物理学など分からないのか、国土交通省も農水省もただただ河川を直線化し大型化させ、雨が降ったら一刻も早く海に押し流す事しか考えていないのです。
こうして、都市部は全て水循環が切断され、地表が受け取った太陽熱は蓄積される一方となったのでした。もし違うと言うなら出て来て文句を言え!
最低でも都市部のヒート・アイランド現象が国土交通省以下の行政によって引き起こされた事がお分かり頂けたと思います。最低でも疑問を持っていただければ幸いです。
ただ、CO2温暖化論という国際的な国家的なデマの問題があるのですが、そもそも定点観測が行われている土地の周りがヒート・アイランド化によって軒並み(全国どころか全世界規模で)気温上昇しているのです。つまり、現在の観測網では本来の大気現象が把握できていない可能性があるのです。
② 農村部のヒート・アイランド
農村部は大丈夫と思われている方は多いかも知れませんがこれも全く違うのです。
農村部でも地方都市は下水道化が多少遅れているとは言いながらも基本的な構造は大都市と全く同じですので、中小河川と農耕地を考える事になります。
実は、ほぼ二十年前に大半が完了した圃(ほ)場整備事業によって、田圃の構造が大きく変わっているのです。
昔の水田地帯は曲がりくねった水路の端々に沼地や湿田や葦原が広がり多くの生物が棲みかとしていました。
しかし、伝統的な湿地帯から小河川扱いの沼地は色々な方法で地区内に取り込まれ、大半の湿田は消えましたし、公有水面(原則国有地)とされていた面積は数字のマジックによりかなりが失われた上に、二面張りの直線的な水路と化してしまいました。
その上に、田畑の切り替えやハウス栽培などといったものへの転換が可能なように、何時でも仮に隣であっても田畑が切り替えられるようにと、昔は段々畑状に上から下へと水が送られていた水田が各々取水し各々排水できる構造に変えられてしまったのでした。
この結果、ひとたび大雨ともなると雨は土壌丸ごと排水路に流し込まれ土も水も失うことになってしまったのでした。
結果、昔は平地にも見られた上の田植えが終わらないと水が下まで来ないとかいった関係が消えてしまったのでした。いずれにせよゴルフ場のような雨が降れば直接排水路に流し込まれ河川に入る事となってしまったのでした。
斑状に水田、畑、ハウス、駐車場、倉庫…などが相当に増えている上に、数年前まで強力に推進されてきた減反政策によっても全国の水田としての作付面積(夏季に水が入れられる水張面積)は半減しヒート・アイランドへの道をひた走っているのです。
従って、都市部だけではなく、地方でも急速に夕立が降らなくなっている事はどなたも経験的にお分かりになっていると思います。
③ 山間地のヒート・アイランド
この話は林業による人工林地の実態を把握されていないと全く理解できない話なのですが、山に入らない都市に住む方々には中々理解できない事かも知れません。
まず、戦後の農林省による拡大造林政策の発動とは、本当に必要な時には全く間に合わなかった用材林地(大半は杉と桧)の造成でしたが、平坦地はそれこそ米作推進の真っただ中だったため、大半は工業地帯から外れた兵庫、愛媛、福岡、佐賀、熊本、宮崎(何やら今回の西日本の災害地に重なりませんか?)…などが林野庁から狙われた結果(農家に民有林としての人工林育成を勧めた)、大量の杉山、桧山が急増したのでした。
結果、どうなったでしょうか、既に、少子化、無産化、人口減少(これだけでも住宅は余り続けているのです)の上に所得の半減化によって住宅の需要が激減した上に、相対的に所得を維持している都市住民の住居はマンションと化し鉄とコンクリートとプラスティックスとガラスと僅かな外材(米松)で建てられているのです。
こうして凡そ阪神大震災の頃から需要を失った国産材は急増したパネル工法に取って代わられる傾向が顕著となり、実質的に拡大造林政策以来の人工林は放置されたのでした。
結果、通常の伐期である40~45年を大幅に超える人工林地が急増したのでした。
元々、針葉樹は広葉樹に比較して根を張らない上に、腐葉土を全く造らず土地が痩せ続ける上に、木材が売れない事から間伐、枝打ちがされずに間伐したとしても現場の急傾斜地に危険な倒木が放置(売れないからですが)される上に、間伐されない事から陽が入らず昼なお暗い中で下草も生えずに、剝き出しの土壌が一方的に雨に打たれて夥しい土壌が流出し続けているのです。
このため売れない木材が急傾斜地に放置され、年々、体積と重量を増した危険な人工林が支える土壌を失いながら崩れる順番を待っている状態とになっているのです。
また、山の奥までコンクリート構造物が造られ、三面張りの水路で水が奪われている事も山のヒート・アイランド化の大きな原因である事は言うまでもありません。
こうして、人工林の中も著しい乾燥化が進み、かつての広葉樹林の森に見られたスポンジのようなふわふわした腐葉土は全て押し流され保水力のない瓦礫のような砂漠地が広がっているのです。
瓦礫の砂漠からは蒸気は持ち上げられる事無く山にも雨が降らなくなっているのです。
これが山に造られるダムにも水が溜まらなくなっている理由の一つなのです(最近は関東地方のダムに水が無いと言う話は頻繁に聴かれるようになりましたね)。
これで、山岳地帯から里山まで人工林化された山地でもヒート・アイランド化している事が多少はお分かり頂けたと思います。
こうして、列島の全体が乾燥化しヒート・アイランド現象が進んでいる事がお分かり頂けたと思います。
猛夏とも言うべき列島の高温化傾向は、国土交通省が地表から水を消し去った事によって発生しており、殆ど認識されていない農村から山林に掛けても農林水産省が地表から水を奪った結果発生しているのです。
この熱物理学を全く理解していない国交、農水の二省を中心に戦後70年掛けて伝統的な列島が破壊され続けて来たことがお分かりになったと思います(詳細は前述の三本を中心にお読み下さい)。
問題はこの列島全体を覆う人為的なヒート・アイランド現象でしかないものを、なにやら亜熱帯から熱帯化している(これは全体の現象の一面の表面だけを見たものでしかありませんが…)とか、CO2温暖化による史上経験した事もない異常な豪雨の頻発と高温化によるものであり、とんでもない異常気象によるものであるとする大嘘にあります(史上経験した事もないような…と馬鹿騒ぎしていますが、気象庁や予報官も実はアメダス導入以来のほんの20年間程度の話を大騒ぎしているのです)。
その一部であるCO2温暖化論といった大嘘は、行政とそれに連動する気象庁などでは今も小声で主張する傾向はあるのですが、35度を超える様なこれほどの高温化傾向が出現しているにもかかわらず、今年は何故か比較的おとなしいのは、ホッケー・スティック捏造以来、CO2温暖化論が国家的な大嘘である事が一般にも理解され、小役人などよほどの大間抜け以外は、この大嘘を真顔で信じている人がかなり減っているからでしょう。
ここではこの問題についてはふれませんが、敬愛する武田邦彦教授が脚光を浴びる前、つまり二十年も前から、エントロピー理論の槌田敦と近藤邦明氏らによってCO2温暖化論が国際的、国家的デマであるという事を主張され続けて来ました。
私は、「有明海異変」を出した後(15年も前の役所にいた頃ですが)彼らと連携し、この「環境問題を考える」“環境問題の科学的根拠を論じる”というHPのサブ・サイトとして下世話な公共事業を取り上げる「アンビエンテ」として足掛け五年程書き続けました。
このため、CO2温暖化論がデマであることについては…大型サイトの「環境問題を考える」“環境問題の科学的根拠を論じる”をお読み頂きたいと思います。
人工林問題については平野虎丸氏のサイトをお読み下さい。