スポット076 ぶどう寺の参拝客急増について(繰り上げ掲載)
20170105
太宰府地名研究会(百嶋神社考古学研究班)古川 清久
ヤフー・ニュースに ひぼろぎ逍遥(跡宮)212 勝沼ワインの里の大善寺① “山梨県甲州市勝沼町勝沼の五所神社の神宮寺” 213 勝沼ワインの里の大善寺 ② “大善寺の全国的傾向”で取り上げた甲州市勝沼の古刹 大善寺の記事が出ていました。
“逃げ恥”効果!ロケ地の寺が初詣客で大にぎわい 新たな縁結びスポットに
全国の寺社では2日、多くの初詣客でにぎわった。昨年大ヒットしたTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」ののロケ地となった山梨県内の寺には若いカップルらが押し寄せた。“逃げ恥”ブームに乗り、新たな縁結びスポットとして脚光を浴びている。(スポニチアネックス)
元々“ぶどう寺”として有名で、寺で醸造したワインを振る舞っているが、ドラマで出演者が飲んだ赤ワインは昨年末で完売。「例年は3月まで残っているのに、あっという間に売り切れてしまいました。初詣客の皆さまには白ワインとぶどうジュースを飲んでいただいています」。ドラマに登場後の昨年11月には1カ月間で全国から約5000人の参拝客が訪れた。これは前年同時期の約10倍で、その人気ぶりは年明けも衰えなかった。
一方、最終回ロケ地となった横浜市の篠原八幡神社も初詣客が増加。横須賀市から来た今井俊介さん(32)と久我宏子さん(26)は「いつもは鎌倉ですが今年は逃げ恥を見てここへ来ました。来年も仲良くいられるようお願いしました」と恋愛成就を祈願。神社関係者は「逃げ恥効果もあり境内の外まで列ができました」と話した。
この勝沼の大善寺に関心を持ったのは、幻の九州王朝宮廷舞と考える「筑紫舞」の伝承神社である宮地嶽神社の神紋である三階松がこの勝沼のぶどう寺大善寺にも使われているという事実を知ったからでした。
この三階松に守られたように見える真ん中の「唐花」=「門光」の神紋こそ久留米の高良大社の奥に隠された本当の九州王朝の神紋なのです。
昨年11月、三週間を掛けて北関東、山梨の神社調査を行いましたが、その際、このぶどう寺も見せて頂きました。
それ以来、何故、この国宝ともされるぶどうを持った薬師如来が造られているのか?
ぶどう寺の薬師如来堂を寄進した三階松の家紋を使う三枝氏とは如何なる氏族なのか?
何故、この氏族が甲斐に住み着いたのか? 門光の神紋が何故打たれているのか?
ぶどうを列島に持ち込んだのは如何なる民族なのか?=葡萄という言葉自体はペルシャ語ともギリシャ語とも言われますが、仮にペルシャ語では(budau)であり、中近東の陸続きのエリアですから通底していると言って間違いないはずで、それらを持ち込んだ民族とはスサノウ系だったのではないか…。…といった事を考え続けて来ました。
ぶどう寺については、既に、二本のblogを公開していますが、この問題に関して新たに五~六本のblogを書きました。
ぶどう寺の国宝如来堂改修費用のねん出も同様ですが、多くの神社、寺院が苦労されています。
既に、生き残りを掛けて多くの社寺が努力をされていますが、本来、国家、地方自治体は宗教団体への税金の投入を行わないという憲法の立場があります。
ただ、その代償として、課税しない事によってこれらの社殿の新築、改修費用を賄える構造にはなってはいるのですが、愚かな小○竹○改革による国民の所得の激減を含む社会全般の変化により、特別な社寺を除いてほとんどの社寺の存立基盤が揺らいでいるのです。
そうした中、宮地岳神社の光の道と併せぶどう寺の参拝客の急増は喜ばしい限りです。
共に三階松の神紋が打たれた二つの社寺が思わぬ脚光を浴びている事に奇妙な因縁を感じるのですが、どうせなら、ブームに併せ、「ひぼろぎ逍遥」(跡宮)で公開する前に先行して「ひぼろぎ逍遥」で先行掲載したいと思います。
ここでは、以前、公開した二本のblogの一部を再掲します。
以下、 ひぼろぎ逍遥(跡宮)212 勝沼ワインの里の大善寺① “山梨県甲州市勝沼町勝沼の五所神社の神宮寺” の一部づつを再掲載。
九州王朝の最大拠点の一つと考える福岡県久留米市大善寺町の大善寺玉垂宮の「大善寺」という名の寺が宗派を超えて全国に存在しているという奇妙な事実です(天台宗の大善寺も存在する)。
これが、ただの偶然ならば悩む必要は一切ないのですが、まずは調べて見る事にしましょう。
次は大体の傾向を見るためにランダムに拾い出しをしたものです。
大善寺 高知県須崎市 高野山真言宗
大善寺 東京都八王子市 浄土宗系の単立寺院
大善寺 福岡県福津市 浄土宗 (宮地嶽神社に近く付近に勝浦地名あり)
大善寺 広島県三原市 浄土宗
大善寺 岡山県矢掛町 浄土宗
大善寺 島根県益田市 日蓮正宗
大善寺 鳥取県鳥取市 浄土宗
大善寺 兵庫県福崎町 東寺真言宗
大善寺 愛知県江南市 臨済宗
大善寺 愛知県新庄市 浄土宗
大善寺 奈良県五條市 高野山真言宗
大善寺 京都府京都市伏見区 浄土宗
大善寺 三重県津市 浄土真宗 本願寺派
大善寺 静岡県島田市 浄土宗
大善寺 群馬県桐生市 浄土宗
大善寺 滋賀県新旭町 天台宗 (天台真盛宗の総本山)
大善寺 福井県坂井市 真言宗智山派
大善寺 山梨県甲州市 真言宗智山派 (元は天台宗)ぶどう寺として高名
以下省略(青森県を始めとして東日本にもあるようですが…)
大善寺 福岡県久留米市 天台宗
大善寺 大分県宇佐市 曹洞宗 (宇佐神宮の神宮寺で元は天台宗) 公式には弥勒寺
多くの神社を見続けているのですが、神宮寺と思われるものに限らず多くの大善寺が全国に存在している事にかなり前から気付いていました。
特に、九州王朝の中枢部と思われる福岡県久留米市大善寺町を起点とし、大分県宇佐市の宇佐八幡宮まで存在していたと推定している九州王朝時代の古代官道の終点にも、同じく字大善寺があり、大善寺と言う名の曹洞宗の寺が存在していた事を意識して以降(これについては、「ひぼろぎ逍遥」跡宮 093 宇佐神宮とは何か? ③ “宇佐神宮の神宮寺としての大善寺”を参照)、最低でも西日本に広く存在する宗派を超えた大善寺は、日本の仏教宗派が形成される奈良の南都六宗派 三論宗成実宗法相宗倶舎宗華厳宗律宗 以前に既に存在していた可能性があるのではないか?また、九州王朝の国寺が存在し、それが大善寺と呼ばれていたのではないかと考えるようになったのでした。
勿論、これらの奈良以降、多くの仏教教団が成立して千数百年のこのかた、天台から真言、平安仏教から浄土宗、浄土真宗など鎌倉仏教へ寺が宗旨を替える事は何度もあった訳で、くら替え自体は決して珍しいものではありません。
ただ、宗旨替えはあったとしても、その寺が、開山以来の代々続いた名前を替える事はあまりなく、最低でも西日本全域に等しく同じ名の寺が国ごとに在った様に見えるのは、奈良仏教以前に半ば国教化された「大善寺」とその末寺があった様に見えるのです。
これが、安楽寺の異常な多さとどこか通底しているように思えるのですが、今のところは粗い仮説に留まっています。
そこで、たまたまネット検索で見つけた山梨県甲州市勝沼町勝沼の真言宗大善寺の画像を見ていると、驚く事に三階松の神紋があることに気付いたのでした。
言うまでも無く、この三階松の神紋も、九州王朝の幻の宮廷舞とも言われる「筑紫舞」が、くぐつによって千数百年の永きに亘って秘かに舞われて来たとされる宮地嶽神社の神紋であることは言うまでもありません。
同社は九州王朝の研究に於いても最重要の神社であり、神紋でもあるのです。
故)百嶋由一郎先生からは、第四代懿徳天皇、第七孝霊天皇、第八代孝元天皇の三代を表すものと聴いており、山梨県の真言宗の大善寺が何故この紋章を使用するのか?と、しばし思考停止状態に陥ったほどでした。
以下、ひぼろぎ逍遥(跡宮)213 勝沼ワインの里の大善寺 ② “大善寺の全国的傾向”一部を再掲載。
大善寺 北海道室蘭市 曹洞宗
大善寺 青森県北津軽郡板柳町 浄土宗
大善寺なし 岩手県
大善寺なし 秋田県
大善寺なし 宮城県
大善寺 山形県酒田市 真言宗醍醐派
大善寺地名のみ 福島県郡山市田村町大善寺
大善寺なし 茨城県
大善寺なし 千葉県
大善寺 神奈川県横浜市 浄土宗
大善寺 神奈川県横浜市都筑区南山田
大善寺 神奈川県横須賀市 金峯山不動院大善寺
大善寺なし 埼玉県
大善寺なし 茨城県
大善寺 群馬県桐生市 浄土宗
大善寺 栃木県矢板市 浄土宗
大善寺 東京都八王子市 浄土宗系の単立寺院
大善寺 東京都八王子市 浄土宗系の単立寺院
大善寺 静岡県島田市 浄土宗
大善寺 群馬県桐生市 浄土宗
大善寺 山梨県甲州市 真言宗智山派 (元は天台宗)ぶどう寺として高名
大善寺 愛知県江南市 臨済宗
大善寺 愛知県新庄市 浄土宗
大善寺地名のみ 愛知県一宮市千秋町浅野羽根大善寺(字)
大善寺 新潟県新発田市 浄土宗
大善寺なし 石川県
大善寺なし 富山県
大善寺なし 長野県
大善寺なし 岐阜県
大善寺 福井県坂井市 真言宗智山派
大善寺 三重県津市 浄土真宗本願寺派
大善寺 滋賀県新旭町 天台宗 (天台真盛宗の総本山)
大善寺なし 和歌山県
大善寺 奈良県五條市 高野山真言宗
大善寺 京都府京都市伏見区 浄土宗
大善寺 大阪市天王寺区生玉寺町5-2
大阪府 大阪市天王寺区城南寺町8-26
大善寺 兵庫県福崎町 東寺真言宗
大善寺なし 愛媛県
大善寺なし 徳島県
大善寺 高知県須崎市 高野山真言宗
大善寺 鳥取県鳥取市 浄土宗
大善寺 島根県益田市 日蓮正宗
大善寺 岡山県矢掛町 浄土宗
大善寺 広島県三原市 浄土宗
大善寺 山口県萩市 日蓮正宗
大善寺 福岡県福津市 浄土宗 (宮地嶽神社に近く付近に勝浦地名あり)
大善寺 福岡県久留米市 天台宗
大善寺 大分県宇佐市 曹洞宗 (宇佐神宮の神宮寺で元は天台宗) 公式には弥勒寺
大興善寺 佐賀県基山町 天台宗別格本山大興善寺(肥前、肥後に一寺?)
大善寺なし 鹿児島県(旧日向国)
大善寺なし 宮崎県(旧日向国)
ご覧のとおり、全国に30~40の大善寺(北海道の2寺を含む)及び大善寺地名が存在することが分かります。
では、これをどのように考えるべきでしょうか?
これほど多岐に亘り宗派を超える大善寺が存在するという事は、最低でも、天台、真言の平安仏教以前に、「大善寺」という寺号が好んで付されたとしか言いようがなく、それを中国の“画竜点晴(晴は別字)を欠く”安楽寺の様に一種の流行といった話でもなさそうで、奈良仏教の南都六宗派に大善寺の痕跡が無い以上、消されたものの、それ以前に遡る、つまり、近畿大和朝廷の国分寺、国分尼寺に先行する大善寺が全国に存在したのではないかと思えるのです。