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445 人吉盆地に息づく明治期の教派神道系 杉山稲荷神社(あさぎり町)

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445 人吉盆地に息づく明治期の教派神道系 杉山稲荷神社(あさぎり町) 

20170206

太宰府地名研究会(神社考古学研究班) 古川 清久


これも201725日(日)熊本を対象とした熊本神代史研究会(仮称)神社トレッキングで廻った神社の一つです。

340人規模とまではいきませんでしたが、雨の中20人規模の熱心な方により、同社の祭礼(初午)を見学させて頂きました。

ただ、小さな神社で「熊本県神社誌」には搭載されていませんし、神社に精通された方でもほとんどご存じない神社だと思います。

確かに、集落の氏神とかどこかの神社の境外摂社といったものではなく、どうやら同族集団の屋敷神か、その氏族の奉祭する神社といった面持を持っています。


445-1


 祠に入ると縁起らしきものが置かれており、稲蒼魂命、大貴己命、太田命、大宮姫命、保食命と五柱が祀られているようです。


445-2


稲荷ことウカノミタマ=父スサノオ、母神大市比売 古事記名/宇迦之御魂神 日本書記名/倉稲魂尊

ですが、表記には以下のように多くのバリエーションがあり、音にしか意味はないようです。


稻荷大明神(イナリダイミョウジン)稻荷大神(イナリノオオカミ)稲荷神(イナリノカミ)宇賀迺魂命(ウガノタマシイノミコト)宇迦之魂神(ウカノタマノカミ)宇賀命(ウガノミコト)宇加御魂神(ウカノミタノカミ)稲倉魂命(ウカノミタノミコト)倉稲玉命(ウカノミタノミコト)倉稲魂(ウカノミタマ)

・宇迦之御霊大神(ウカノミタマノオオカミ)倉稻魂大神(ウカノミタマノオオカミ)宇迦能御魂大神(ウカノミタマノオオカミ)宇賀魂大神(ウカノミタマノオオカミ)宇迦御魂大神(ウカノミタマノオオカミ)

・倉稲魂大神(ウカノミタマノオオカミ)宇迦之霊大神(ウカノミタマノオオカミ)宇迦之御魂大神(ウカノミタマノオオカミ)倉稲御魂大神(ウガノミタマノオオカミ)宇賀乃魂大神(ウガノミタマノオオカミ)宇迦之御霊神(ウカノミタマノカミ)宇迦乃御魂神(ウカノミタマノカミ)宇賀魂神(ウカノミタマノカミ)宇賀能御魂神(ウカノミタマノカミ)宇迦御靈神(ウカノミタマノカミ)宇迦能御魂神(ウカノミタマノカミ)稻倉魂神(ウカノミタマノカミ)倉稻魂神(ウカノミタマノカミ)宇加之魂神(ウカノミタマノカミ)稲倉魂神(ウカノミタマノカミ)宇賀御魂神(ウカノミタマノカミ)食稲魂神(ウカノミタマノカミ)倉稲魂神(ウカノミタマノカミ)宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)倉稲玉神(ウカノミタマノカミ)蒼稲魂神(ウカノミタマノカミ)倉穂魂神(ウガノミタマノカミ)宇賀之魂神(ウガノミタマノカミ)宇迦野御魂神(ウガノミタマノカミ)宇迦御霊神(ウガノミタマノカミ)宇迦魂神(ウガノミタマノカミ)宇迦能魂之神(ウガノミタマノカミ)宇賀之御魂神(ウガノミタマノカミ)宇迦御魂神(ウガノミタマノカミ)宇加乃御玉御祖命(ウカノミタマノミオヤノミコト)宇迦魂之命(ウカノミタマノミコト)蒼稲魂命(ウカノミタマノミコト)倉稲御魂命(ウカノミタマノミコト)宇迦御霊命(ウカノミタマノミコト)宇賀之御魂命(ウカノミタマノミコト)宇迦之魂尊(ウカノミタマノミコト)倉稲魂尊(ウカノミタマノミコト)稲蒼魂命(ウカノミタマノミコト)宇加乃御玉命(ウカノミタマノミコト)倉魂命(ウカノミタマノミコト)宇迦魂命(ウカノミタマノミコト)稻倉魂尊(ウカノミタマノミコト)宇賀御魂命(ウカノミタマノミコト)稻蒼魂命(ウカノミタマノミコト)稻倉魂命(ウカノミタマノミコト)若宇迦乃賣命(ウカノミタマノミコト)宇迦之御魂命(ウカノミタマノミコト)食稲魂命(ウカノミタマノミコト)宇賀之美多摩命(ウカノミタマノミコト)宇迦御魂之命(ウカノミタマノミコト)宇迦神霊命(ウカノミタマノミコト)宇迦之魂命(ウカノミタマノミコト)倉稲魂命(ウカノミタマノミコト)宇加之御魂命(ウカノミタマノミコト)宇加魂命(ウカノミタマノミコト)倉稻魂命(ウガノミタマノミコト)宇賀魂命(ウガノミタマノミコト)宇迦能御魂命(ウガノミタマノミコト)宇迦御魂命(ウガノミタマノミコト)宇賀能御魂命(ウガノミタマノミコト)宇迦能御命(ウカノミノミコト)宇賀霊神(ウガミタマノカミ)…と多くの表記がありますHP資料から)。


 一応、お稲荷さん(実は豊受大神、アメノウヅメ…)であり、稲蒼魂命、保食命に重複を感じますが、赤の幟は、堂々たるお稲荷様である事は間違いがありません。

 ただ、一点だけ奇妙に思うのは、注連縄が掛けられている事で、お稲荷さんに注連縄があるのはこれまで見たことがありません。

 ともあれ、雨の中、遠方から駆けつけられた氏子の皆さんは、百人は超えてはいないものの、最低でも50人は超えていたと思われ、遠来の熱心な信奉者をお持ちである事が分かります。

 ご迷惑が掛かると申し訳ないので差し控えますが、幟を寄進された方の名をみるとそれなりの傾向が見て取れ興味深く思ったところです。


445-3


初午にこれほどの遠来の氏子を集めるのは屋敷神程度の神社としては驚くべき事に思えます


縁起に依れば、稲蒼魂命、大貴己命、太田命、大宮姫命、保食命と五柱が祀られているようですが、印象として、この五柱は良くある組み合わせであって、神殿に置かれた杉姫大明神、粟島大明神、正徳大明神こそが本来の祭神のように見えるのです。


445-6


どう見ても杉姫稲荷こそが主祭神に見えます


そこら辺りが稲荷に注連縄が張られている理由かもしれません。

 杉姫稲荷という神社は、教派神道系の独立系教団が広島市にあるのですが、その系統の神社であるかは今のところ分かりません。


平和大通りから鶴見橋を渡り、比治山トンネルを抜けてすぐ、みみょう幼稚園を右に曲がり比治山の山すそを南に進むと赤い鳥居が見えてくる。再開発前の古い鳥居はもっと山裾にあったように記憶している。

445-4この神社は明治政府化の祭政一致の国家神道とされた神社神道の神社ではなく、黒住教、金光教、天理教などの明治政府が公認した教派神道である神道十三派の神理教の教師であった藤田宣彦が大正3年(1914)に創立した誠光教の神社である。            …中略…

藤田宣彦は小倉で誠光教を創始しているが、藤田家が信仰されていた杉姫稲荷の元に教団本部を移設した。祭神は天地御祖大神(主神)、杉姫稲荷大神(副神、水商売)、淡島大明神(婦人病)、金神さん(方位)である。

大根役者「杉姫稲荷本社~広島市南区段原南」より


 勿論、稲荷とはスサノウと大山祗系の神大市姫の間に産れた辛国息長大姫大目命(アメノウヅメ、豊受大神、支那津姫=草部吉見のお妃時代の名…)のことなのですが、杉姫という別名は聞いたことがないため、自らの奉祭する杉姫を稲荷に見立てて生延びた神社なのかもしれません。

 神理教は小倉在住の佐野経彦によってニギハヤヒを奉祭する教団として成立しましたが、どうやら、この杉姫稲荷はその分派の物部系の教派神道系教団であり明治の新興宗教の一派のようなのです。

 現在は外部から兼務宮司による祭礼が行なわれていますが、本来、独立の教団でありその必要性は全くないものと考えています。

 始めは天豊ツ姫(→阿蘇ツ姫→天比理刀咩→寒川姫→杉山姫と変名)と考えその方向で考えていたのですが、そうではなく、豊受大神=伊勢の外宮様=ニギハヤヒ=山幸彦のお妃そのものを祀る古い系統を引いた物部教団と考えられそうです。

 現在、佐野経彦が創った明治の神理教教団は格上の豊受大神ではなくニギハヤヒ(山幸彦)を主神としています。

 これに対して、この教団は豊受大神そのものを主神としているようでよりプリミティブ(こちらが本来の姿のようですが)な印象を受けます。

 古代に於いては、入り婿は次から次に切り替えられる政略結婚の駒でしかなく、重要なのはその御姫様なのです。

その意味で杉姫稲荷は本来の形を残したものであり、それを言えば京都の伏見稲荷も同様なのです。

ただ、この教団は、明治期に独立系教団として生き延びようとした物部教団だったと考えるものです。


445-5


百嶋由一郎最終神代系譜(部分)

参考


445-7

445-8


百嶋由一郎氏が65年を掛けて作成された神代系譜80枚を希望される方は09062983254古川まで


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