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スポット191(前) 日本版ニューオーリンズと化した倉敷市真備町の全町水没

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スポット191(前) 日本版ニューオーリンズと化した倉敷市真備町の全町水没

20180710

太宰府地名研究会 古川 清久


sp191-1翌日には書き始めていましたが、ストックが多い事から、結果、2ケ月後のオンエアになりました。そのつもりでお読み下さい。以下。

岡山県倉敷市の北部を東に流れる小田川流域の町真備町(倉敷市に編入)の29%が水没しています。

私も総社市~真備町~旧矢掛町に掛けても何度か入っています。

山陰道に比べてフィールド・ワークが薄い山陽道でも比較的神社を見て廻った地域です。

まず、真備(マビ)町とは奇妙な町名ですが、当然にも筑前守、肥前守にもなった(左遷なのですが)吉備真備(キビノマキビ)にちなんで付された町名なのでしょう(彼は矢掛町の出身なのですが…)。

神社研究に於いては、湯原や中山を別にすれば、岡山市、総社市、井原市の一帯は岡山県でも最も重要なエリアになるのです。古代史に多少とも関係する者としては、以前から、この小田川に沿って古代の官道が通っていたのではないかと考えていました。

勿論、我々にとっては九州王朝の古代官道になるのですが、それはともかくも、相当に広い平坦地が続く一帯で穏やかに東流する小田川が印象深い土地と言えそうです。


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まず、東の総社市には吉備津神社、吉備津彦神社、総社宮…と重要な神社が揃い踏みしています。

 十五年以上前でしたが、天子宮調査のために真備町の西隣、矢掛町小田の武荅天子宮(ムトウテンシグウ)に足を運び、その後も何度か周辺の神社を探訪しています。

 このため一帯の地形は今でもある程度頭に入っているのですが、当時の印象もこの一帯は古代に於いては汀線だったのではないか…、最低でも海岸に近い湿地帯か沼地だったのではないかといったものでした。

 まず、倉敷と言えば児島湾干拓の児島が頭に浮かびますが、岡山から倉敷には海起源の非常に大きな平地が隅々まで広がっているのです。その延長と言えば良いのでしょうか?この小田川流域にも長閑な平地が続いているのでした。しかし、今回は神社の話をする訳ではありません。

 既に災害報道によって良くご存じの通りですが、矢掛町と併せ倉敷市に編入された真備町の話です。

この町の平坦部が水没しているのですが、平坦地とは事実上の中心地でもあることから、どうやら中心部が壊滅的な被害を受け、町としての機能も麻痺してしまっているのです。

 では、どうしてこのような事が起こってしまったのでしょうか?

 勿論、西日本全域と同様に、数十年に一度のような豪雨によるものとか、高梁川からの逆流とか、真砂土の堆積…、それに何故か小声ながらも流木が堰き止めたからなどと言われていますが、まずは、決堤(堤防決壊)こそが最大の原因である事は間違いがありません。


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真備町の冠水地域


 これが、最も重要なポイントなのですが、あまりにも大きな豪雨による災害という宣伝=情報操作に誤魔化されたからか、マスコミも含めて(彼らは知っていて黙ります)殆ど議論さえされていないようです。

 そもそも、溢流(オーバー・フロー)と決堤とでは意味が全く異なります。雲泥の比があるのです。

 溢流の場合は、水が入ったとしても徐々に水位が上がるだけで、仮に水浸しになったとしても破壊力はそれほど大きくありません。

 考えて見れば分かる事ですが、一人暮らしの在宅介護の老人の移動とか言った問題を無視すれば、単にじわじわと水位が上がるだけで、通常はそれなりの対応も可能でしょうし、建物被害も少なく、真夜中に急に人命が失われる事までは発展しないでしょう。

 しかし、堤防決壊となると全く話は異なります。一気に大量の土砂や昨今急増している放置された人工林の杉や桧などが雪崩れ込む事から、当然にも桁違いの破壊がもたらされる上に、その後も大量の水が間断なく襲い続けるのです。

sp191-4 今回の三~四ケ所(実際にはもっと増えるでしょう)の決堤のポイントは、詳細には確認していませんが、風化花崗岩真砂土中心の土質である事を考えると当然にも天井川でしょうし(真砂土の場合は粒子が大きい為天井川になりやすいのです)それだけでも影響は大きかったはずです。

確か私が訪れたのは三~四回程度ですが、どの当時(妙な表現ですが)も河川改修工事は行われていたと記憶していますが、


倉敷・真備の堤防3カ所決壊確認 豪雨浸水被害で国交省調査団

“…調査団の福島雅紀・国交省国土技術総合政策研究所河川研究室長は「堤防ができた当時に想定していた水位を超えた」と指摘。増水した水が堤防上部からあふれ、川の外側から堤防の土を削って崩壊させた可能性があるとみて、決壊の原因を詳しく調べる。…

…小田川では別にもう1カ所決壊しているとの情報を得ているとした上で「現地で見て被害の
sp191-4大きさに改めて驚かされた。この規模の河川で堤防の上部まで水が達することはめったになく、降雨がいかに激しかったかがうかがえる」と話した。”


と、一ケ所で百メートルの決堤を引き起こしたにも拘わらず、豪雨の責任にすることについてだけはしっかりと怠りないようです。

 まず、これだけ破壊的な洪水を引き起こしておきながら自らの責任など全く考えていないのであり、国土交通省は、堤防決壊による被害の責任は一切被災者持ちで、自らは全く何の責任もないと考えているのです。実に酷い話です。哀れなのは棄民化された被災者のみと言う訳です。

 戦後70年もの間、大規模な予算を使い継続的に河川改修を続けておきながら、一体この後何十年経ったら責任を取るつもりなのでしょうか?これでは膨大な予算を引出し土建屋どもに配り続ける事だけが仕事であって、自分達だけはその余禄と言うか甘い汁を吸い続けているだけになっているのです。

 “小田川では、昭和477月洪水、昭和519月洪水により、大規模な内水氾濫が発生し、昭和49年~平成11年にかけて沿川11箇所において排水機場が整備され、合計約26m3/sの排水ポンプが増強されました。”(国土交通省)

 幕藩体制下でも河川改修の指揮をとった普請方の役人が堤防決壊の責任を取って切腹した話は方々に残っていますし皆さんも幾つかは聴かれた事があるはずです。

つまり、国家のためにも国民のためにも国土のためにも国民経済のためにも一切働かず、ゼネコンへの天下りと高額年金や退職金の事しか考えていない連中ばかりがいるのが国土交通省なのです。

まあ、農水省所管の林野庁が暴走させた拡大造林の放置が保水力を喪失させ、大量の雨水どころか土壌流出と人工林の大規模崩落を齎している事ははっきりしていますが、両省ともこの失策は全て経験した事もない大豪雨のせいにすれば良いとでも考えているのでしょう。

それはともかくも、まさか、鬼怒川水害の時の様に指揮拠点となるべき行政官庁は元より、警察署や消防署などは水没してはいないでしょうが、ここまで行くと馬鹿さ加減だけが見えて来るのです。

 地元なのにそんなことも分からないのか…と言いたくなるのですが、こういうものは、本来、丘陵地にこそ置かれるべきなのです。それが不可能なら最低でも全てを高床式にすべきですが、結局は車が移動できなければどうしようもないのです。まさかとは思いましたが調べると案の定でした。

 話では合併によって支所はハザード・マップの水没エリアにあるとの事(こいつら馬鹿か?)、関心があったのは予算の問題と土地取得の問題だけで、長期的視野を持たなければいざと言う時に行政機関そのものが救援の対象(助けてくれとばかりに手を振る事は無かったでしょうが…)になりかねないのです。



 

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sp191-6倉敷市、実態把握遅れ対策後手に 真備支所の水没響く

…最大の要因は真備支所の水没とみられる。市地域防災計画では、市本庁舎への災害対策本部の設置に伴い各支所に地区本部を置き、各地区本部は現地の災害情報や活動状況を災害対策本部に報告することとしている。真備町地区でも5日夜の災害対策本部の設置後、地区本部を開設したが、7日未明に小田川の河川堤防が越水すると、3階建ての真備支所は2階まで冠水。災害対策本部と連絡が取れなくなった。…




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