No.1056 (2015/11/06)連載 再考・地球温暖化論 その15
気温変動と大気中CO2濃度の関係4
本題に入る前に、最近のトピックスから。
気候変動に関する枠組条約締約国会議COP21を前に、NASAが爆弾発言(笑)という話題です。衛星観測の結果、南極氷床の体積が年間1000億t程度増加していることを確認したということです。COPに関わる連中にとっては大変困った発表でしょう。
今更、そら見たことか!等というつもりはありません。またこの報告に一喜一憂するつもりもありません。結局のところ、リモートセンシングとは非常に大きな不確定要素があり、定量的に信頼できるかどうかわからないということが今回の報告の教訓だと考えています。早くも気象研究者主流からNASAの今回の報告に対して信憑性を疑う発言が続いているようです。バカバカしいことです。
気象研究者諸君は、巨大コンピュータの仮想空間で遊ぶことをやめて、気象現象に対して真摯に向き合い、CO2温暖化のお祭り騒ぎからは身を引いて、地道な研究に戻るべきでしょう。合掌。
槌田-近藤による分析の概要
さて、本題に戻ります。Keelingの示したグラフによって、どうやら人為的CO2地球温暖化仮説とは異なり、現在でも気温変動が原因であり、大気中CO2濃度の変動は結果であるらしいことが分かりました。
ただ、Keelingの研究は、グラフを得るために長期的な傾向を取り除くという恣意的操作の詳細が不明確なこと、その後あまり論理的に進められなかったため、曖昧さを残していました。
そこで、熱物理学者の槌田敦と私は更に検討を行うことにしました。まずは、Keelingのグラフの追試することから始めることにしました。気象庁による世界平均気温偏差とKeelingによるMauna Loa山におけるCO2濃度の観測値を比較した図を次に示します。
図を詳しく見ると、気温とCO2濃度の曲線の変動傾向は確かに同期しており、曲線の特徴点の発現は1年程度気温変動が先行することが分かります。
Keelingのように恣意的なデータ操作をせずに、誰にでも追試できる方法で気温とCO2濃度の変動傾向を比較するために、気温とCO2濃度を示す曲線の時間に対する変化率を比較することにしました。
一方、気温変化率については平均気温に対する偏差を表すために0℃の周辺で変動するのに対して、CO2濃度変化率は1.5ppmの前後で変動しています。これは、大気中CO2濃度が長期的な傾向として年率1.5ppm程度上昇していることを示しています。
これは何を意味しているのでしょうか?つまり、観測期間の平均的な温度状態では年率1.5ppm程度の大気中CO2濃度の上昇をもたらし、気温が平均気温よりも高くなると1年ほど後の大気中CO2濃度の上昇量が年間1.5ppmよりも大きくなることを示しています。ここから類推できることは、気温変動が大気への1年間当たりのCO2放出量=CO2放出速度を変化させるのではないか、ということです。
そこで、これを確認するために世界平均気温偏差と大気中CO2濃度変化率の変動傾向を比較することにしました。
図からわかるように、気温とCO2濃度変化率を表す曲線の変動傾向は同期していることが確認できます。両曲線が乖離している部分は、気温以外の現象、例えば1990年前後であればフィリピンのピナツボ火山の大噴火が影響していると考えられます。それでも両曲線の極値などの発現は時間的に同期しています。
現象的には、気温変動と同期している海面水温の変動によって、海洋からのCO2放出速度が大きくなることが主要な原因の一つであると考えられます。
以上から、気温と大気中CO2濃度の関係として、気温とCO2濃度変化率(速度)が同期していること、気温がCO2濃度変化率を変化させる事が分かりました。
また、大気中CO2濃度の変動が気温変動から1年間程度遅れる理由が明らかになりました。気温やCO2濃度はエルニーニョ/ラニーニャの発現の時間スケールである4年程度の周期で増減しています。CO2濃度は、気温変動と同期しているCO2濃度変化率を積分することによって求められます。周期変動関数を積分することによって位相が1/4周期だけ遅れることが知られています。例えば、コサイン関数を積分すると∫cos(x)dx=sin(x)=cos(x-π/2)
位相がπ/2だけ遅れます。エルニーニョ/ラニーニャの発現周期は4年程度なので、CO2濃度変化率を積分することで求められるCO2濃度は位相が1年間程度の遅れを生じるのです。
気温と大気中CO2濃度変化率が同期することが確認できたので、更にその関係を詳しく調べるために、同じデータに対して気温と大気中CO2濃度変化率の関係を求めるために散布図を作成しました。
散布図の回帰直線から、分析期間において大気中CO2濃度変化率 y は世界平均気温偏差 x に比例し、次の関係にあることが分かりました。
y = 2.39x + 1.47 (ppm/年)
つまり、槌田と私の共同研究の結論は以下のとおりです。①分析期間において大気中CO2濃度は平均して年率1.47ppm上昇した。
②世界平均気温偏差が1℃上昇することで大気中CO2濃度の上昇量は年率2.39ppmだけ多く上昇する。
③世界平均気温偏差が観測期間の平均から約0.6℃低くなると大気中CO2濃度が定常状態になる。
この研究の成果は、気象学会員であった槌田によって気象学会誌『天気』に投稿されましたが、気象学会は論文掲載を拒否しました。その後、槌田によって物理学会誌に「原因は気温高、CO2濃度増は結果」(2010年 Vol.65, No.4)として報告されました。
この散布図について、形式的には大気中CO2濃度変化率が気温を変化させると解釈することも出来ます。しかし、現象的に、CO2温暖化仮説のように、CO2濃度が気温を変化させるという可能性はあったとしても、CO2濃度変化率が気温を変化させることは考えられません。
それに対して、気温が大気中CO2濃度変化率を変化させるという現象は、化学反応速度論に合致するものです。
槌田と私の研究によって、現在においても大気中CO2濃度と気温の関係は、気温変動が原因であって、大気中CO2濃度は気温変動の結果として変動していることが観測データの分析で明らかになりました。CO2地球温暖化仮説は机上の空論であり、虚像だったのです。
仮に、万が一CO2地球温暖化仮説が正しかったとしても、大気中CO2濃度に対する人間活動による影響は小さく、たとえ現状でCO2放出をゼロにしたとしても、減らせるのは高々12ppmにも満たない微々たるものであるため、CO2排出量の制限など、温暖化対策として無意味なのです。