スポット193 行政が引き起こした列島のヒート・アイランド化によって豪雨災害と灼熱地獄が発生した ②
20180715
太宰府地名研究会 古川 清久
今さら言うまでも無い事ですが、西日本全域を襲った豪雨災害から一転、息をするのも辛いばかりの熱波が被災者と言わず行政担当者と言わず西日本全域の住民を襲っています。
この豪雨災害の大半が国土交通省と農水省によってもたらされているという事を(序)で書きましたが、これからは、何故、「線上降水帯」などという俄仕立ての「新造語」が作られたのか?を考えてみます。
下調べの段階で発見したのは二つの記事でした。勿論、これ以外にも本質に迫るリポートはあるのですが、これは一般にも理解しやすいものを選んだ一部と考えて下さい。
一から書こうとも思いましたが有難く借用させて頂くことにしました。私が書きたいのはこの先の話なのでお許し願います。
梅雨前線、異例の居座り 大雨を招いたメカニズムは 2018年7月7日20時03分
西日本を中心とする今回の大雨は、梅雨前線が東日本~西日本の上空で数日間ほぼ同じ位置に停滞したことが原因だ。
梅雨前線は、北側にある「オホーツク海高気圧」と南側の「太平洋高気圧」が、日本の近くでぶつかり、停滞することで生じる。太平洋高気圧の勢力が次第に強まり、前線が北上することで梅雨が明ける。気象庁の桜井美菜子・天気相談所長によると、今回は暖かく湿った空気が前線に向かって流れ込む梅雨末期の典型的な雨の降り方だが、前線が同じ場所に長時間居座ったことが異例だったという。高知県馬路(うまじ)村では3日間で、年平均の4分の1にあたる1091・5ミリの降水量を記録した。
気象庁は6月29日に関東甲信地方で梅雨明けしたと発表したが、台風7号が日本海を通過したタイミングで、太平洋高気圧は南東に移動。このため梅雨前線が再び南下し、台風7号が運んできた暖かく湿った空気が雨雲の供給源となり活発化。広範囲に雨を降らせた。関東甲信地方でも6日は雨が降り、気象庁は「戻り梅雨」だと説明する。
さらに、上空を流れる偏西風の影響などで、太平洋高気圧が北上できないまま、オホーツク高気圧との拮抗(きっこう)が続いたことで、停滞が長期間続いたとみられる。
昨年7月の九州北部豪雨では、局所にとどまり強い雨をもたらす「線状降水帯」が突然現れ、数時間で記録的な雨を降らせたが、今回は広範囲で大雨が長時間にわたって続いた。
名古屋大の坪木和久教授(気象学)によると、太平洋高気圧の位置は今回、九州北部豪雨に比べて東寄りだったことが、その理由だという。坪木さんは「太平洋高気圧が南東に移動したことで、東日本~西日本にかけて広範囲に暖かく湿った空気が大量に入り込みやすくなった」と話す。
もう一つご紹介しましょう。
■湿った空気と上昇気流が積乱雲を作るんだ
森羅万象博士より 梅雨のころ、北海道の北側にある「オホーツク海高気圧(オホーツク海気団)」と南の海上にある「太平洋高気圧(小笠原(おがさわら)気団)」が日本付近でぶつかって、押しくらまんじゅうをしている。暖かい空気のかたまりと冷たい空気のかたまりの境目は線のように延びて「前線」ができる。これが「梅雨(ばいう)前線」だ。北と南の高気圧はがっぷり四つの状態だから、前線はあまり動かず、1カ月以上も雨やくもりの日が続く。
梅雨が終わりに近づくと、南西の方から暖かくて湿(しめ)った空気のかたまりが押し寄せ、さらに南からも暖かい湿った風が吹きつけてくる。これが大雨をもたらす。よく天気予報で「前線を刺激(しげき)して活発になる」と説明する状況だ。
このタイプの梅雨の大雨は西日本で起こりやすい。特に、九州や中国、四国地方に多い。約300人の死者と行方不明者を出した1982年の長崎豪雨や2012年の九州北部豪雨など、大きな被害(ひがい)をもたらす災害がたびたび起きている。
このほか、新潟県などの北陸地方でも梅雨の末期に豪雨が多い。大雨が降るのは「暖かい湿った空気」と強い「上昇(じょうしょう)気流」がそろったときだ。水蒸気を多く含んだ空気が上空へ行き、膨(ふく)らんで温度が下がると、冷やされた水蒸気が細かな水のつぶになる。これらが集まって雲になる。上昇気流が強いと、空気はどんどん上へ向かう。雨つぶが次から次へと発生して雲が上へ延び、大きな「積乱(せきらん)雲」ができる。
梅雨の終わりには、梅雨前線に沿うように中国大陸の南の方から湿った暖かい空気のかたまりが日本へ流れ込むようになる。この空気のかたまりは天気図で長く延びた舌(した)のようにみえる。「湿舌(しつぜつ)」と呼ぶ現象だ。湿舌が西から延びて東シナ海の上を通る間に、大量の水蒸気を取り込む。
地上では、高気圧からは時計回りに風がふき出す。夏が近づいて太平洋高気圧が勢力を増すと、西側や北側へ張り出してくる。元気になった太平洋高気圧の西のへりでふき出す風によって、南の海から暖かくて湿った風が日本へ向かってふき込むようになる。もともと、湿舌では弱い上昇気流が発生している。そこに大量の水蒸気を含んだ南よりの風がぶつかると、一気に持ち上げられて、強い上昇気流になる。積乱雲が次々とできて、強い雨が長時間にわたって降り続く。それで記録的な大雨になるんだ。
湿舌が発生しているとき、大雨が降るのは天気図にある梅雨前線よりも南側になることが多いよ。
記録的な大雨には地形も関係することが多い。暖かくて湿った風が山の斜面(しゃめん)にぶつかると、強い上昇気流ができる。風がどんどん流れ込んでくると、積乱雲が次々と発生しやすい。
太平洋高気圧の勢力がさらに強まると、梅雨前線は北側へ押し上げられる。そうなれば梅雨明けだ。梅雨前線がいすわり続けると、今後も大雨となる可能性がある。天気予報を注意して聞いてみよう。
(取材協力=竹見哲也・京都大学准教授)[日経プラスワン2016年7月9日付]による
ヒート・アイランド化した災害列島は国土交通省と農水省が造りだした
相当に多くのネット情報を拾いましたが、真新しい「線上降水帯」という奇妙な表現に相当する新現象、つまり、特別に変わった事が起こったという事実は全く得られませんでした。
まずは、一般的なモデルとして考えますが、要は、梅雨の末期に北のオホーツク高気圧と南の太平洋高気圧の接点に沿って南から湿った水蒸気が大量に流れ込み、そこで湿った大気が持ち上げられる事によって大雨が降った(降り続けた)という従来型の「発達した停滞前線豪雨」でしかなかったのでした。
そうなのです。スコール化して激しくはなっているものの、何も変わったことは起こっていないのです。
愛媛で72時間に1,100㎜降ったと騒ごうが、24時間に均せば高々200㎜台の普通の大雨でしかなく、この程度の雨ならば、古くは1957(S32)年の諫早大水害や1982(S57)年の長崎大水害の降り方には遠く及ばないのです。諫早大水害の降水量は24時間(決して48時間でも72時間でもないのです)で1,109㎜なのであり、長崎大水害は、降り始めからの24時間水量が長崎海洋気象台で527mmを観測されているのです。
恐らく、テレビで大騒ぎするお天気おネイさんから若手の気象予報士の方々は、せいぜいアメダス導入後の20年程度の情報しか拾わずに、史上経験した事もないような大豪雨…と好い加減な情報を流しているのでしょう。ただし、降水量それ自体は同じだとしても、一気に降って一気に流れ降ると洪水にはなるため無視して良いと言っているのではないのです。しかし、実はこれが非常に重要なポイントなのです。
当然にも災害対策の遅れは指摘せざるを得ません。その原因は原発事故に伴い全く生産的でも将来を見据えたものでもないただただ意味のない後ろ向きの後始末(これも永遠に続く)のために続く東日本大震災への傾斜配分(しかもとんでもない法外な単価の支出がなされている…)の結果、必要な投資が行われずに全く意味のない工事に手を取られているのです。原発推進に旗を振った馬鹿議員や首長共は腹を切れ。
さて、始めは東日本にさえ豪雨災害が発生するかのように大騒ぎされてはいたのですが、蓋を開けて見れば、結果として発生した災害は大きかったものの、実際に起こった豪雨の総量は言われるほどのものではなく、行政のために大袈裟に報道はされものの普通に頻発するレベルでしかなかったのでした。
要はこれからも発生する程度の豪雨であったものの、他の要因、つまり、売れない人工林の崩壊による洪水や水没しやすい所に住宅開発を認めるとか、崩落しやすい崖地への住宅地の開発を認めるとか、全体として山の頂まで三面張りのコンクリート側溝を張り巡らせ、ちょっとした雨でも一気に水が住宅地に送り込まれる構造が造られてしまった事、大型河川の直線化が進んだ結果一気に流れる事(これによっても破壊力は等差級数的に増大する)によって水位は急激に上がり、二級河川以下は水が排出されずに水没し易くなる…と言った具合で、一気に水が吐き出され、所によっては一気に水が溜まる構造が造られてしまった事にあるのです。真備町の小田川流域については上流にダムを造りたい国交省のダム屋(ダム派、河川派の対立も)によるサボタージュもありそうですが(少しぐらい洪水を出す方がダムを造り易い…)。
笑い話のような“これまでに経験した事もない数十年に一度の大災害”が毎年やってくる
問題は、ヒート・アイランド化されてしまった結果、都市部ばかりか農村部も山林までも全ての地表が乾燥化されてしまったために、間断なく上昇気流を発生させる構造(当然海面温度よりは高い)が出来てしまい、フライパンと化した列島の平坦地で上昇気流が発生し続け、あたかも熱帯のスコールのような雨が次から次に降ってくる装置が造られている事なのです。
国土交通省と農水省が中心となって造り上げられた現在のヒート・アイランド化した列島の国土は南西の海から膨大な水蒸気を含んだ大気を呼び込み、線上降水帯などと名を変えられただけの発達した停滞前線に沿って間断なく上昇気流が発生し大雨が降るという現象が起こったのでした。
問題はこの現象が頻発するヒート・アイランド化した国土が造り出された事にあるのです。
この仕組みというか装置が出来上がったことによって、気象庁が声高に叫ぶ“これまでに経験した事もないような数十年に一度の大災害”が実に毎年起こる事になったのでした。
結局、何のことはない、両省は戦後70年掛かって災害規模を大きくしたのでした。
災害を防ぐと称して国庫から貴重な税金を引出し、実質的にファミリー企業化した関連の受注業者に収賄の先付とも言うべきできるだけ美味しい単価で発注し、後付けの賄賂とも言うべき天下りをしているだけのことなのです。
国民(住民でも納税者でも生活者…こんな名称など何の意味もない)でも何でも良いのですが、この土木工事に関わる実質的なマフィア、シンジケートが流すデマから独立し、自らの頭で考え行動する以外に自らの家族と生命と生活と財産を守る事が出来ないと言う事が鮮明になったのです。
事実50年ほど前に起こった真備町の水害でも死者は12人と比較的少なかったのでした。
では、何故、線上降水帯などという恥知らずな呼称を使ったのでしょうか、探索はこれからですが、農水省の拡大造林政策によって生じた土壌流出(巨大な堆砂によってダムの洪水調節機能が消失している)と国土交通省によって河川、末端水路が雨樋化した結果、降雨と共に一気に洪水が起こる国土に変えられた事を知るべきなのです。今や穏やかな日本はありません。自らは自らで守るしかなくなっているのです。