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257 日田市の「加々鶴」地名について “「カカ」を「蛇」とする民俗学者吉野裕子説から”

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257 日田市の「加々鶴」地名について “「カカ」を「蛇」とする民俗学者吉野裕子説から

20151026

久留米地名研究会(神社考古学研究班) 古川 清久



久留米地名研究会の天ケ瀬温泉五馬高原研修所にいる事が多くなると、大分県日田市から久留米市や筑豊の田川市に向かう事が非常に多くなります。

そうなると、決まって、国道210号線の加々鶴(カカヅル)トンネルを抜け夜明ダム上流の夜明橋付近を頻繁に通過する事になります。

 以前から気にはしていたのですが、ようやく意味が分かりました。

今回は、この奇妙な「加々鶴」(カカヅル)という地名の話です。


257-1

国道210号(現386号)線の加々鶴バス停



もう亡くなられて久しいのですが、吉野裕子という民俗学者がおられました。

 その著書の一つに非常に知られた「蛇」があります。


257-2


この論旨を我流に要約すれば、案山子(カカシ)とは田んぼの収穫を荒らすネズミや雀を追い払う蛇を擬制したものであり、「カカシ」の「カカ」が蛇の古語で、「シ」は人を意味している。

 それの説明として、正月の「鏡餅」の「カガミ」も「カカ」+「ミ」(巳)であり、蛇がトグロを巻いているものを、豊穣のシンボルとして、 感謝を表したもの…になり、蛇の一種として「ヤマカガシ」があることも蛇が「カカ」と呼ばれていた痕跡となるのです。 以下、ネット上から参考…



257-3


日本原始の祭りは、蛇神と、これを祀る女性(蛇巫=へびふ)を中心に展開する。
1.女性蛇巫(へびふ)が神蛇と交わること
蛇に見立てられた円錐形の山の神、または蛇の形に似た樹木、蒲葵(ピロウ=ヤシ科の常緑高木)、石柱などの代用神や代用物と交合の擬(もど)きをすること。今も沖縄および南の島々に、祭祀形態として残る
2.神蛇を生むこと
蛇を捕らえてくること
3.蛇を捕らえ、飼養し、祀ること
縄文土器にはたくさんの蛇の文様が登場する。縄文人の蛇に寄せる思いは、次の2点である。これらの相乗効果をもって、蛇を祖先神にまで崇(あが)めていった。
1.その形態が男性のシンボルを連想させること
2.毒蛇・蝮(まむし)などの強烈な生命力と、その毒で敵を一撃で倒す強さ
埴輪の巫女が身につけている連続三角紋、装飾古墳の壁に描かれる連続三角紋・同心円・渦巻紋も、蛇の象徴であると推測される。
稲作の発達につれて弥生人を苦しめたのは、山野に跳梁(ちょうりょう)する野ネズミだった。ネズミの天敵は蛇である。弥生人は、ネズミをとる蛇を「田を守る神」として信仰したと思われる。
日本人は、蛇がトグロを巻いているところを円錐形の山として捉えてきた。それが円錐形の山に対する信仰につながる。三輪山はその名称がすでに神蛇のトグロの輪を意味し、神輪(みわ)山の意がこめられている。

日本の蛇信仰(吉野裕子著) - tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」より


257-2

お分かり頂けたでしょうか?

こ の吉野裕子の「かかし」=蛇説については、久留米地名研究会の永井正範氏から教えられ、以前から気にはしていたのですが、加々鶴トンネルの上の高井岳にそ れらしき形状(「おかがみ」山)を発見できなかった事から(ただし、一キロほど上流から見ると「おかがみ」山のように見えるため高井岳も可能姓はありそう です)、それっきりにしていたもののです。ただ、良く考えると、国道210号(現386)線から嘉麻峠へと向かう211号線の夜明鉄橋北側の小山が、まさしく「おかがみ」山だったのです(次の写真)。

この一帯は夜明ダムが完成する昭和28年頃まで、筑後川流域の旧安楽寺領(太宰府天満宮の前身)などのそま山から切り出された木材が、古くは太宰府まで持ち込まれるために筏に編成されて下流に送られる中継地だったのです。

右岸からは彦山方面から大肥川が流れ込み、筏流しを行う海人族により多くの木材が編成される場所だったのです。そのような場所だからこそ変則的な交差点には志賀島の志賀海神社が祀られているのです。

あとは、グーグル・アースや国土地理院による地図閲覧システムなどで、現地をご自分で検証してご判断下されることをお勧め致します。


257-4


この一帯が「筑紫」「豊」の国境をなす場所である理由は、大蛇行部の険しい地形にあることは明らかですが、この蛇行する大峡谷は詰まり易く、時として大きな堆積を起こす事によって、ダム化する事によって上流部に水平堆積が進み日田の平野が形成されたとも言えそうです。

 この加々鶴地名の「カカ」は「オカガミ」山か「蛇行部」を以て、蛇を神と見なす海人族に「カカ」と名付けられた可能姓はあると思います。

 では、「鶴」はと言えば、蛇行地を蔦の蔓とも見立てられますし、鶴(鶴自体が蔓から付された名称でしょうが)の首状の地形に見える事から「鶴」が充てられたとも言えるでしょう。

 なお、地名研究では「鶴」地名は断崖地名(足摺岬)ともされますので申し添えます。


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