265 四国の高良神社調査で思い出した発酵茶 “高知県大豊町の碁石茶”
20151114
久留米地名研究会 古川 清久
今回も民俗学的な興味だけで書いているもので、退屈に思われる方はパスされて構いません。
徳島県の高良神社4社を実見し、大歩危、小歩危を抜けて高知県に入って来た時の事でした。
早明浦ダム直下の道の駅「土佐さめうら」に寄ったところ、「碁石茶」を見つけました。
ご覧の通りの四国のど真ん中もど真ん中の大豊町だけで生産されていると言う幻の「碁石茶」に遭遇したのです。
以前(十年前ぐらいですか)、大恩ある国立S大学の経済学部の某教授から、教授の研究室で四国の山奥だけで作られているという珍しい発酵茶を飲ませてもらい少し分けてもらったことがあったのです。
当時も「碁石茶」と聴いていましたが、その場所がここだったとは、現物に遭遇するまで全く意識していなかったのです。
話としてはそれだけの事ですが、問題は、何故、この地にこのような照葉樹林文化としか言いようのない強烈な特殊なお茶の文化が存在していたのかに尽きます。
まず、通常、お茶と言われるものの中で、茶葉を使わない麦茶、花(ジャスミン)茶などを除いた、いわゆるお茶の内、緑茶を好んで飲んでいたのが日本人と言えそうです。
中国の山岳地帯の雲南省、貴州省、四川省…では半発酵のウーロン茶、インド、スリラン カなどでは完全発酵紅茶が飲まれ、インドの植民地支配からイギリスまで紅茶を好む傾向が広がっていますが、日本では、なぜか、室町期以降に緑茶が高価な嗜 好品として持ちこまれる事になるのです。
そもそも、お茶が高価な交易品として珍重された理由は、緑の少ないシルクロード周辺の人々にとって、ビタミンの摂取(供給)が難しく、それを一気に補う半ば薬の様なものとして導入されたようなのです。
その点、緑あふれる列島では、ビタミンの欠乏が起こるはずも無く、貴重な薬と言った触れ込みで下こまれたお茶も、結局は、嗜好品としての域をでることなく、気取った文化としてしか根づかなかったのです。
ましてや、一般の庶民はと言うと、白湯こそが有難いものであり、良くてドクダミ茶や、麦茶で喉を潤していたのでした。
そもそも、緑茶もウーロン茶も紅茶も原料は等しく茶葉でしかなく、高温多湿の中国の南 部では放っておいても自然に発酵が進むのですから、その状態で乾燥させたのがウーロン茶になり、高温なインドでは完全に発酵させ、日本では早い段階で熱処 理して発酵を止めて乾燥させ、紅茶から緑茶その中間といったものになった訳です。
ところが、この土佐の山奥(なぜか嶺北と言うのだそうですが)には完全発酵の黒茶が根付いていたのです。
この碁石茶は茶葉の生産からかなり手間の掛るもののようで、製品としてのお茶の製造には特殊な漬物のような製法で乳酸発酵が起こるようなものである事から、実際に製造技術を持った人が直接大陸から渡って来ているとしか考えられないのです。
このような事を書くと直ぐに、学芸員などが鼻であしらうといった事になるのが関の山ですが、では江戸期に自然発生的に出現しそれらが一切他国に持ち出されなかったなどと言うのでしょうか?
私にはかなり閉鎖的な文化複合がセットで持ち込まれ、その大陸的な閉鎖的な環境の中だけで秘かに伝えられたと見たいのですが、余裕があれば、再度、周辺の神社調査でも行って見たいと思うものです。
最低でも、大豊町には、祇園神社があり、白髭山があり、七戸集落があり、肝心の黒石地区の付近には奥大田という物部を思わせる地名まで拾えるのですから。
このブログを長期間お読みの方には、それなりに言わんとする事はお分かりかと思います。
古代の大陸の匂いがぷんぷんするのです。
以下参考
黒茶
黒茶(こくちゃ、くろちゃ)は、中国茶のうち、麹菌により数ヶ月以上発酵させる後発酵製法により作られる茶をいう。プーアル茶など。
一般に茶(中国茶)は製法の違いにより青茶・緑茶・白茶・黄茶・黒茶・紅茶の6種類に分類される。この内、黒茶と紅茶が発酵茶であるが、紅茶とは発酵方法が異なる。
普洱茶(雲南省)が黒茶の中でも有名。他に、六堡茶(広西省)、唐磚茶(四川省)、茯茶(湖南省)などがある。
タイ、ミャンマーでは同様の製造方法を経た茶をラペソーと称し、食用にしている。
なお、日本でもわずかではあるが黒茶は製造されており、四国が主な生産地である。徳島県では「阿波番茶」と呼ばれた茶が黒茶であり、緑茶である番茶と全く製法が異なるため、現在では阿波晩茶と表記されるようになってきている。高知県では「碁石茶」と呼ばれる物が作られており、これは文字通りに碁石状の形をしている。
ただし、地元ではほとんど飲まれず、瀬戸内海の島々で作られる茶粥の材料として出荷される。希少品であり、予約生産にほぼ限られている。これは、18世紀から土佐藩の参勤交代の道が北山道に変更されたことで、土佐の大名行列が伊予の国を通ることになり、それによって碁石茶を知った伊予仁尾の商人が販売権を買って、瀬戸内海辺りに仁尾茶の名前で売りだしたことによる。
製造工程
黒茶は、次の製造工程を踏まえ生産される。
殺青 茶葉を加熱する。茶葉に含まれる酵素の働きを止め、酸化を抑制する。
初揉 揉捻。茶葉を揉む。茶葉の組織細胞を壊し、茶の成分浸出を良くする。
堆積 茶葉を積み重ね、発酵させる。黒茶の風味を引き出す。
復揉 揉捻。茶葉を再び揉む。
乾燥 乾燥させる。保存性を高め、香りを良くする。
消費地
産地周辺で消費される以外に、雲南省のプーアル茶は香港やマカオで好まれ、以前から出荷されているほか、近年は韓国などの外国でも近年消費が伸びている。湖南省の茯茶は、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区、甘粛省などの少数民族がビタミン補給のための生活必需品として消費されているが、近年は日本にも輸入されるようになっている。
茶葉の形状
詳細は「緊圧茶」を参照
大きく分けて、茶葉そのままの形状である散茶と、茶葉を発酵させる前に圧縮して固めてある緊圧茶の2種類がある。
ウィキペディア(20151114 19:30)