203 「釜蓋」とは何か?“民俗学者 谷川健一の永尾地名から”②
20150408
久留米地名研究会 古川 清久
「釜蓋」(カマブタ) “天草下島の釜蓋岬”
もう一つ分りやすい例をお見せしましょう。
見るからにエイの尾のような形をしています。
これが、谷川健一氏がいうところの永尾地名だとしても、まず、お叱りは頂かないでしょう。
その他の永尾地名について
1)酔ノ尾 (鹿児島県いちき串木野市)
瀬戸内海沿岸を除く九州一円では、“酔い食らう”事を“エイクラウ”と言う所がかなりあります(勿論、古語ですが、エイクロウトットヤロー、エイクローター…)。
鹿児島県のいちき串木野市にも酔ノ尾(エイノオ)という奇妙な地名があるのです。
旧串木野市街を抜けて鹿児島市に向かう国道三号線の交差点に酔ノ尾があることに気付き、直ぐに宇土半島の永尾と同種の地名ではないかと感じました。
条件としては似ています。海岸から五〇〇メートルほどの駆け上がりの場所で、海側には長崎鼻という尖った岬が海に突き出しています。埋立てや漁港修築事業などによって現地の地形は相当に変わっていますが、多分、海から山に這い上がったエイのような形状をしていたのではないかと考えています。
印象としては、湾曲した照島海岸がエイのひれの形を成しているようですので、地形としては合っていると思います。エイの左側は埋立が進んで形状を読めませんが、古地図を探ればこの事はさらに一層鮮明になるでしょう。交差点の名称は付近の地名を持ってくる事もあるため、必ずしも地名の中心地である事を意味しませんが、交差点はエイの尾から背中に向かう場所にあるように思います。
さて、谷川健一氏が書いていた宇土半島の永尾では、付近のカマンタ山(鎌田山)と関連付けられました。
この、いちき串木野の酔ノ尾(エイノオ)には、付近に袴田(ハカマダ)という地名があり、カマンタを連想させます。側には酔ノ尾川が流れて長崎鼻の付近に流れ下っています。
この流路は交差点の西の袴田に近接して流れていますので、酔ノ尾地名はこちらの方がむしろ中心地の可能性が高いのではないでしょうか。
市史などを探ればもっとはっきりした事が分かるはずですが、この点は今後の課題とさせて頂きます。この薩摩川内市から旧加世田市周辺は、沖縄からさらに南の島々へと繋がる場所ですから、南方系の地名があっても決しておかしくない場所です。実は、開聞岳のそばの頴娃(エイ)町のエイも可能性があるのではないかと思っていましたが、決定打がなく悩んでいました。
これについては、後日、熊本地名研究会のK氏に先行されました(後述)。
永尾(エイノオ)と酔ノ尾(エイノオ)、表記は異なるものの、全く同じ成立過程を持つ地名であることは疑いようがないでしょう。
国道3号線にあるいちき串木野市の交差点”酔ノ尾(Enoo)”
鹿児島県旧串木野市を通過する三号線の交差点に酔ノ尾がそして付近には袴田も。
この永ノ島も一応可能性があると見ています。