スポット123 筑後川の南から北の被災地を眺める 悲しい棄民国家の現実
“ここでも「災害地名」が意味を持っていた「道目木」「梅ケ谷」”
20171001
太宰府地名研究会(神社考古学研究班) 古川 清久
日田市から筑後川の南(左岸)を久留米方向に走っていると秋晴れの空の下に痛ましい山肌が確認できるようになりました。
言うまでもなく2017年九州北部豪雨と命名された降雨による針葉樹林地の大崩落の鮮明な爪痕です。
写真は国道210号線沿いの道の駅から北の被災地を映したものです。
全てが崩落地ではないとしても、見えない部分にも多くの崩落地があるはずで、農水省、林野庁が言う森は国土を守り水をつくっているなどの話がとんでもない大嘘である事がお分かりになるでしょう。
おいそれとは入れませんが、山の崩落現場に行けば、次は隣が崩れて来ることが素人目にも明らかなはずで、二次災害、三次災害、四次災害、五次災害、六次災害…と永久に繰り返される事は明らかでしょう。
これは二枚目の写真の左三分の一辺りに有る「道目木」~「梅ケ谷」地区に関する記事です。
この調査は、福岡県朝倉市内の13カ所のため池について、九州農政局、福岡県と合同で実施された。
報告書によれば、流域で発生した土石流の影響や河川の浸食の影響で、一部のため池では決壊など重大な被害が発生したが、その一方で、上流からの土石流を池敷に貯留して下流の被害軽減に貢献したため池もある。
例えば、多くの被害が報告されている朝倉市山田地区の鎌塚ため池の場合、上流からの土石流や流木と、山の神ため池の決壊土砂が鎌塚ため池の貯水池に流入し、設計より高い貯水位となったが、決壊を免れた。貯水池や洪水吐下部には土砂や流木が大量に堆積しており、山田地区への土砂・流木の流入を大きく軽減したと考えられるとしている。
また、朝倉市杷木地区の梅ケ谷ため池では、上流の山腹から大量の土石流と流木が貯水池に流入したが、洪水吐の水路周辺の軽微な損傷にとどまり、ため池が砂防ダムの役割を果たし、下流の住宅などへの被害を大きく軽減したとしている。
このように、土砂を受け止めて下流の住宅への被害を軽減したと思われるため池が、今回の九州北部豪雨では複数存在したと、報告されている。
この調査報告書は、農研機構のホームページの
http://www.naro.affrc.go.jp/disaster20170705/files/survey_Report1.pdf
に公表されている。
元々、農業用水目的のため池が、自らの仲間である林野庁が引き起こした大災害をくい止めたと宣伝する事にどれ程の意味があるか分かりそうなものですが、もしも農水省所管の老朽ため池事業の導入が遅れていたならば、下流域への災害はさらに輪を掛けて大規模になった可能性があった事に目を瞑り吹聴せざるを得ない事自体に農水省の危機感が現れているのかも知れません。
要は、決堤には至らず溢流(オーバー・フロー)に留まっただけだったのです。
さて、我々地名に関心を寄せる者が注目するのはこの現場の地名です。
そうです。「道目木」と「梅ケ谷」地名です。
お分かりでしょうか?
「道目木」(ドウメキ)とは「造目木」(ゾウメキ)「座目木」(ザメキ)「后目木」(ゴウメキ)「宮目木」(グウメキ)…といった急河川に付される地名であり、言うまでもなく、ドウドウ、ゾウゾウ、ザアザア、ゴウゴウ…といった川のザワメキを表現したものなのです。
つまり、大雨が降った夜中などに水が一気に集まるような場所で、脅すつもりはありませんが水の音が谷に響き渡るような危険な場所に付けられる地名なのです。
一方、「梅ノ谷」にはある時代の記憶と言った意味が残されているはずで、洪水の結果、埋まった平地(これには良い意味と悪い意味があるでしょうが)を感じさせます。
「梅ノ谷」が梅が植えられた土地ならば美しい山里の風景で済むのですが、恐らく美しい文字に敢て変えざるを得ない悲しい過去も閉じ込められていた様にも思えるのです。
こうした「災害地名」は災害後に気付かれれば注目され、その時だけマスコミも飛び着き脚光を浴びるのですが、平穏な何でもない時に口に出そうものなら、地価が下るとか縁起が悪いとか土地が売れなくなるじゃないかと攻撃されるのが関の山なのです。
良いとこ「もっと早く言ってくれたら他所に移っていたはずなのに…」がせいぜいで、所詮、この手の話をする人間には良い事など一つもないのです。
結果的には、ため池も溢流程度で収まり大事には至らなかったのですが、このような危険な土地の未来への「地名」のメッセジも意味がない時代に入っている事が良く分かります。
それは、朝倉から日田に掛けての全域がおいそれと住む事もままならない危険地帯になってしまったのですから、このような「災害地名」も意味のない無用の長物となってしまったのです。
要約
九州北部に甚大な被害をもたらした記録的豪雨。今回、被害を拡大させた理由の1つとみられている流木。災害復旧の大きな障害にもなっている。こうした事態を受け、国や自治体は会議を開催。流木の撤去を早急に行うべく話し合いが行われている。
この梅ケ谷ため池には大量の針葉樹が流れ込んだと言われていますが、今回の洪水災害が針葉樹林の大崩落に起因している事は明らかです。
もしも、このため池が決壊していたならば、東北大震災の凄まじさに隠れてほとんど知られていませんが、藤沼ダムという農業用ため池が決壊し8人が犠牲になっているのです。
農業用水目的のため池が、自らの仲間である林野庁が引き起こした大災害をくい止めたと宣伝する事にどれ程の意味があるか分かりそうなものですが、…と前述した意味がお分かり頂けたと思います。
藤沼ダム
最大の地震動 442ガル、且つ 50 ガル 以上の震動が 100秒間も継続したことで堤体すべりが生じ、 北東部にある高さ18m、長さ133mの堤が決壊した。決壊により約150万t の水が流出し、多くの樹木を巻き込んだ鉄砲水となって下流にある居住地域を襲った。 下流の長沼地区および滝地区では、死者7人、行方不明者1人、流失もしくは全壊した家屋19棟、床上床下浸水家屋55棟という被害を出し、田畑の土壌も多くが流失した。 東北大学大学院工学研究科の調査チームを率いる風間聡は、堤の状況や住民の証言に基づき、地震動によって堤は一気に崩れたのに違いないと言う。また、同チームはダムの下流約500mに位置する滝地区で高さ2mを越える泥水の痕跡を発見しており、水の力そのもの以上に流木による破壊が激しかったと考えられる[4]。なお、決壊直後の濁流を地元住民が携帯電話で動画記録している。
ウィキペディア(20171024 19:20)による
それは、二十数年間に亘って放置してきた付け回しが廻ってきただけの事であり、林野庁による売れもしない伐期を越えた杉、桧の処理が放置された結果、植林から撤去費用という投下された資金の何百倍~何千倍ものもの代償を地域で支払わされる事になったのです。
では、崩れ落ちた(流れ出したという表現は森林管理の欠陥を覆い隠すトリックですのでご注意を…)二十万トンもの木材はとはどのように処理されているのでしょうか?
信じられないかもしれませんが簡単に言えば焼却処分されているのです。
2017九州豪雨
流木を発電燃料に 大分県と日田市 福岡からも受け入れ検討
2017年08月03日 03時00分 更新
記者:岩尾款
大分県と同県日田市は2日、九州豪雨で大量に発生した流木を木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めた。流木は河川の復旧工事や農業の足かせになっており、順調に進めば、福岡県内の流木も受け入れる方針だ。
国土交通省の推計によると、大分県内の流木は日田市の大肥川や花月川の流域で約2万立方メートル。県や日田市は県建設業協会などの協力を得て流木を回収し、木質バイオマス発電の燃料となる木材チップを加工する「日本フォレスト」(日田市)に処理を委託する。同社は1年間に大分県の流木量以上の処理が可能で、木材チップは県内や九州一円の発電事業者に販売する。
流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性がある。このため水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収し、搬送する過程で取り除く。
福岡県内の流木は朝倉市を中心に約19万立方メートルと推計(国交省)され、県などが処分後の活用策を検討している。大分県循環社会推進課の担当者は「日田市で発生した流木の処理を優先するが、隣県としてできるだけの協力をしたい」と話した。
お分かりでしょうか?
何十年と掛けて育てた杉を単に運び金を払って燃やしているのです。
逆に言えば、とんでもない事に持参金付の燃料を貰って発電しているのです。
これが、情けないばかりの日本の林業の実態であり、それを許した国家の在り様なのです。
まず、そもそも、何故、林業地帯で主として杉を燃やす発電事業が行われているのでしょうか?
元々は、痛んだ杉の処理から始まるのですが、雪害は置くとして、まず、傾斜地の崩壊地に育った曲がった杉とか風倒木、端材、ダムや井関に流れ込んだ流木の処理が徐々に増えて来ました。
昔は、勿体無いと持って帰られそれなりの使われ方がされていたのですが、材の価値が低下するにつれてどうしても処分せざるを得なくなってきた上に、産業廃棄物の処分が利権と化して以降は、野焼きもままならず、自らが産廃業者として処分せざるを得なくなってきたのでした。
ところが、現在はまともに育った杉自体でさえも全く売れない状態になり始めているのです。
このため、最近では立派な商品となるべきものさえもチップとされ燃やされ始めているといった馬鹿げた話が聞こえ始めているのです。
一応、発電しているのだから無駄ではないだろうと考えられる向きもあるでしょうが、火力だけに関して言えば樫(カシ)や椚(クヌギ)と言った広葉樹の方が遥かに火力は強く、だからこそ杉の炭など全く存在しないのです。
結局、40年から伐期を越え60年育てた杉が全く売れる事無く、家屋敷から田畑の一切を押し流し、迷惑どころか、生命や財産を奪い、地域と産業を破壊し、その処分に莫大な税金を投入し、挙句は、一部をチップにするとはポーズだけで(事実上需要はないのです)100のエネルギーを得るために10000を投下すると言った不効率極まりない発電事業を行い、自ら産廃業者に成り下がっているのが現在の林業であり、林野行政なのです。
そして、破綻しきった林野庁の天下り先の一つになっていると言うのですから国賊と言わずして何を国賊と呼ぶのか聴きたいところです。