467 高之口 “目で見て分かる地名?”
20170326
太宰府地名研究会(神社考古学研究班) 古川 清久
以前にも矢筈とか鏡山とか言った目で見て分かる地名を取り上げて来ましたが、これはお分かり頂けるかどうかは分かりません。
鹿児島県の阿久根市から薩摩川内市に向けての3号線は交通量も少なく美しい外洋が広がる風光明媚な所だけに頻繁に通る道なのですが、ここを通過するたびに、「高之口」という奇妙な地名が理解できずに悩み続けています。
普通、この手の地名は別の地区への入口と言った場合が多いのですが、そうでもないようなのです。
さつま川内市側に川内高城(センダイタキ)温泉があり、往年の湯治場だったのですが、ここへの入口はもう少し南に降った西方辺りであり、高の口から落(平家の落人集落との説も、瀬戸内海の越智説も…)辺りを経由するのでしょうが、愛宕の大山塊を越えて入るにはルートとして不適ではないかと思うからです。
結局、“鷹の口”ではないかと言うのが今のところの作業仮説なのですが、阿久根(アクネ)市だけに色々と考えあぐねています。
まず、鷹(タカ)と呼ぶか、鷲(ワシ)と呼ぶか鳶(トビ)と呼ぶかもありますし、嘴(クチバシ)をクチと呼ぶかハシと呼ぶかが民族ごと氏族ごとに異なる事から仕方なくクチバシと呼んだのだろうと想像しています。
鷹橋とか高橋などと書かれていれば、ハシボソガラス、ハシブトガラス、オオソリハシシギ…の例があるように、そのようにも思うのですが、今のところただの思い付きに過ぎません。
このように、「延喜式」とか「和名類聚抄」…といった文献に全く出てこない地名に関しては、多くのファクトを抑えて帰納演繹的考察を行う以外に方法が無いため、類型が存在しない場合には、結局、思い込み、想像、思いつき程度のものになってしまいます。
この地区の龍王神社は見たことがありますが、そこから得られるイメージもこの地名の謎解きには追い付きません。
以前、阿久根の市史などには目を通しているのですが、郷土史の面からもこれ以上踏み込めません。
印象としては、赤崎鼻がこの地名の発信源ではないかと考えていますが、決め手がありません。