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209(前編) 災害後しか関心を持たれない「災害地名」

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209 災害後しか関心を持たれない「災害地名」

20150412

久留米地名研究会 古川 清久

はじめに

地名研究会の編集員と言うよりも実質的には下働きの作業員をやっているだけですが、その関係で行政機関の末端とか大神社とか色々なマスコミとの接触の正面に立たざる得なくなります。

 私達の様に既存の郷土史会、史談会、教育員会などとの関係を一切持たず、学会通説から独立というか孤立を保っていると、村興し町興しのために有もしない通説を持ちあげたりしないで済み、この点から自由でいられると思っていたのですが、それでも新聞社とかテレビ局との接触が出てくると言う事は、戦後流行し勃興した既存の文化団体、研究団体が、ほぼ、壊滅状況になってきた結果だろうと考えているところです。

 ブログもこのペースで書いていると、必ず反論とか抗議とか誤りの指摘とかいったものがあるはずだと思い覚悟していたのですが、どうも、そういう識見を持った方がほとんど出てこない(一度だけ大牟田市の三池史談会会長から名刺しではないものの、一定の指摘がありました。 スポット003 “「駛馬という地名(三池史談会会長)”という新聞記事について 参照 )事からも無視は当然の比率であるとしても、そうでない方はそれなりの割合でおられるはずですから、既にそういった方が全体として壊滅状況になっているとしか考えようがないのです。

 ともあれ、私達の様な素人の団体にも大手テレビ局からお声が掛ると言う異常な状況(文化的焦土)にどうやら突入しているようなのです。最近、福岡の大手放送局から「災害地名」の話が舞い込みました。


災害がなければ注目されない歴史、危機に陥らないとお呼びじゃない変革者や預言者


 災害があると、ようやく「この現場は元々危険な場所だった…」などといいった普段は見向きもされない古老とか識者の見解が妙に持ち上げられ、埃が払われて当然でもあったかのように持ち出されて来るのです。

 津波が入る湾奥地、大型活断層直上地、洪水常襲地、崩壊地、鉄砲水経験地…など日本の様な災害常襲国では少し考えれば幾らもあるのですが、普段、そんなことを言えば「年寄りの戯言だ!」「町興しに反対するのか!」「地価が下がるじゃないか!」「営業妨害だ!」「地権者でもないのによそ者が何を言うか!」となってしまうからです。

 東北大震災後、津波絡みの災害地名の本(「あぶない地名○○」「地名は警○する」「災害・崩壊・津波地名○○」…)といったものが出されましたし、広島の土石流災害後に同地が元は蛇落地悪谷」(ジャラクチアシタニ)だったと言った話が面白おかしくにわか仕立てでクローズアップされました。

 これはこれで立派な調査や研究であり敬意を表するのにやぶさかではないのですが、結局は時流に乗る商業目的(悪いと申上げているのではないのでクレグレモ…)か、良く言って、情緒的な免罪符か諦めとか癒しのためのセレモニーに近いものではないかと思うばかりです。

 とは言え、確かに過去災害に見舞われた土地、頻繁に土石流が襲う土地、ここだけは不思議と助かる土地、ここまでは津波がやって来なかった土地、よそは全て水没したがここだけは漬らなかった…と言った特徴的な土地は、それなりの地名が新たに付され、古来、刻み込まれている場合があることは確かで、その事例は経験を積めばある程度は見当が付けられそうです。

 ただし、古語や方言や外来語に対する素養とか、地形、地質、植生、土質を読む総合的な知識が要求される事になり、我々の様な田舎地名愛好者ぐらいではなかなか追いつかないものです。


国、地方行政機関自体がその貴重な地名を破壊し続けている



谷川健一をして「文化遺産」と言わしめた貴重この上ない宝物としての地名を、効率性とか差別地名や不明地名の排除とかいった勝手な判断によって徹底して破壊し(国土調査、町村合併、区画整理、換地処分…)続けている張本人が行政です。

 そのくせ、災害があると、国土交通省などは自らの子飼いの風土工学系研究者などを動員し、天下り先にしているコンサルタント会社などに災害地名拾い出し(パンフレット作成)させて天下りのお土産や商売にしているのです。

 まず、地名など不確かなものに頼る前に、その土地に永く住み、地元の事情に精通している識者に聴きしすれば、住んではならない土地、買ってはならない土地、できれば避けなければならない土地は分かるはずですが、問題は皆が都市に集中するようになり、そのような情報から全く切断され、分譲業者やディベロッパーといった利潤優先の他人から買わざるをえない状況に陥っている事実そのものが問題なのです。

 昔は全ての人間が自分達の住んでいる土地の事を知っていたし、頻繁に山や谷や川と関係を持って生活していたために、例えば、山にどのような木が生えているかだけでも、滑り易い土地、崩れやすい土地は知っていたし、同じ杉山にしても、幹が曲がった山は地滑りや表層崩れが起きている事から、その下に家を建てる事は決してしなかったものです。

 まず、農水省の拡大造林政策によって、本来、落葉広葉樹や常緑広葉樹で維持されていた山体の勾配が針葉樹に植え替えられれば危険極まりないものになっているのであって、単に山に緑があるからと安心してはいけないのです。

 本来、蛇落地悪谷」といった特殊な痕跡地名を探る前に、最近開発された(山を切り、谷を埋めて造られた)にわか仕立ての急造地こそが危険であり、こういう土地は、決まって、何々ケ丘、何々台、何々タウン、平成○○ヒルズ…と名付けられているのです。

 むしろ、逆に、好字、好感、高アピールの土地こそが怪しいのです。

 何故なら、福岡市内では5000万円以下ではまともな敷地面積の戸建は取得できないとされているように、人が住まない、住んではならない、危ない土地だからこそ売れずに残っていた安い土地である事から開発する価値があるのです。

 実は、このような新造地の下に、多くの人命を奪ってきた危険を告げる情報が刻まれた小字名、四股名が残っているはずなのです。

 このことを頭に入れた上で地名を考えると、最近の急造地ばかりではなく、その時代ごとにそのような事が起こっていると分かって来るのです。

 良い例が、長崎県島原市にあります。海岸部の島原温泉は知られていますが、観光客は振り向きもしない地元の人だけが行く山手の温泉に、「上の湯」、「新山鉱泉温泉下の湯」があります(最近は入っていないので一方は閉鎖されているかも知れません)。

実はこの一帯が「新山」と呼ばれているのです。つまり、「島原大変肥後迷惑」における山体崩壊=大規模土砂崩れによって埋まった地域が新山(まさにニュー・ヒルズ○○)と呼ばれたのです。

 この新山の北には、正直に崩山(クエヤマ)町や栄町が、南には緑町(まさにグリーンタウン○○)が、山そのものが滑り落ちた海岸部には、湊新地町(ポートorハーバー・ニュー・タウン○○)があるのです。

 次はそれに続く大規模災害が近年にも存在した事をお知らせしておきます。


209-1

ほとんど知られていない百万本の国有林が崩壊した宮崎県宮崎市田野町の鰐塚山巨大山体崩壊地

  これは災害から二年後、単身で現地調査に入った時の写真です。ここは「蛇」ではなく「鰐」ですが、この地名は災害とは無関係です。


この点について詳しく知りたい方は、当方のHP「アンビエンテ内」「有明海諫早湾干拓リポート」から

204. 宮崎県鰐塚山針葉樹林の大崩壊 ( 宮崎県内の全ての川が土砂で埋まる

針葉樹林に火を着けろ!

田 野

や、九州大学大学院農学研究院森林保全学研究室による「宮崎県田野町 鰐塚山の崩壊と土砂流出」の詳細な現地リポートなどをお読みください。


標高は1,118m。わにつか県立自然公園に指定されている。

山頂からは錦江湾、桜島なども見える。山頂へは「わにつか渓谷いこいの広場」から始まる登山道を利用して登るか、自動車で登ることも可能(ただし、道路は狭隘である)。

中腹には「わにつか渓谷いこいの広場」がありキャンプ場などが設置されていたが、2005年の台風14号で山腹が崩壊し、土石流が発生して鰐塚渓谷がほぼ完全に破壊したため、同広場は消滅した。また、この被災の影響および地すべりの危険性が高まっていることから、2008年現在、同広場からの宮崎市田野町側のルートの利用は自己責任によるとされている。

ウィキペディアによる



では、本当に危険を今に告げる災害地名があるのか?



これはあくまでもこういう地名が想定できるという一般論としての架空の地名ですので誤解がないように!



水害、水没、堤防決壊、洪水   古川+古賀+古閑+川底

土石流、崖崩れ         萩原+萩尾+貫田+野芥+梅林+埋金+久江谷+梅谷+八景

津波、高潮           吹上+打越

地震              栗林+段谷

軟弱地盤            古田、古枝

火山災害、降灰         吹田+灰原+諏訪

河川争奪            道目木+十津川+今川?

いずれ原子力災害も       ○○○○ 

ばかばかしくて本気で考えていませんので悪しからず。


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