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212 こうばし 終了しました

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212 こうばし 終了しました

20150611

久留米地名研究会 古川 清久


以前、福岡県でも大都市の部類に入る大牟田市や大分県の竹田市を車で走っていて、「荒物屋」なる店を見つけて喜んだことがありましたが、今回もその類いの話です。

 既に幟を揚げた「荒物屋」という商売は探さなければ見つからないほどのものになりましたが、今回は、山平の屋号を付した製粉業=粉製品販売業とでも言うのでしょうか、涙が出て来るほど感動させる昔ながらの店を発見して心が癒された思いがしています。

 さすがに、「きなこ」を知らない人はいないと思いますが(と言っても原料が何かを知らない人は、結構おられるようです)、「こうばし終了しました」の意味が解らない人はかなり多いのではないかと思いますので、記録に留める事にしました。


212-1

もしも、差し障りがあると申し訳ありませんので詳しくは申上げませんが、このお店は、水郷や北原白秋で知られる福岡県柳川市の一角にあります。

 

先に「黄な粉」からお話しますが、言うまでも無い事ですが、原料はもちろん大豆です。

きな粉(きなこ、黄粉)は、大豆を炒って皮をむき、挽いた粉である。加熱により大豆特有の臭みが抜け、香ばしい香りになる。語源は「黄なる粉」で[2]、黄な粉とも書く。

ただし実際には黄色ばかりの粉とは限らず、黄大豆を原料にしたきな粉は黄褐色なのに対し、青大豆を原料にしたきな粉は淡緑色なので、「青きな粉」や「うぐいすきな粉」と呼ばれる。

ウィキペディア(20150611 1300)による

 上方落語にも、定吉が御隠居から買いにやらされた抹茶の代用で青ぎなこの茶をたてる「茶の湯」という話がありますが、今時、重宝される抹茶に対して肩身が狭いのが「きなこ」です。

 正月でもアベカワがあまり食べられなくなりましたので、若い人にはますます縁遠く忘れ去られようとしているように思います。

 さて、「こうばし」です。あまり本気では調べてはいませんが、久留米、柳川、佐賀あたりは大体「こうばし」で通用するようです。また、熊本でも「はったい粉」と呼ぶようです。

 「ひぼろぎ逍遥」 104 はったい粉は、何故、はったい粉と言うのか? を読まれた方は、思い出されたかも知れません。

 もうお分かりでしょう。

 「こうばし 終了しました」とは「はったい粉の販売は終了しました。」…という意味だったのです。

 と言っても若い人にはまだまだ何の事だか…という方は少なくないと思います。

はったい粉

はったい粉(はったいこ、糗粉、麨粉)は、オオムギを炒って挽いた粉。別名は麦焦がし(むぎこがし)、煎り麦(いりむぎ)、香煎(こうせん)。香りは、大豆から作られる「きな粉」と混同されやすいが、色は灰褐色である。

ウィキペディア(20150611 1320)による

 なんとか、若い方も、お分かりになったと思います。

 「煎り麦粉」が最も分かり易い表現ですが、それでも「それが何だ?」となるかも知れません。

 つまり、実生活の中に存在していない事から実感が湧かないのでしょう。

現在では、趣味で自家製クッキーの中に入れたり、自家製飲み物に加えたり、自家製のパンの中に加えたり…といった形でしか利用されないため、その補足的な食材を実際に使う一部の人(自然食品愛好者…)しか知らないものになっているのです。

私自身も、普段の食材としている訳ではないのですから、このような食材を実際に製造し小売している店が現存している事に驚いた訳です。

 勿論、大麦も全国的に生産されている訳ですから、今でも、干物屋(これも少なくなっていますが)や農村部の道の駅などに行けば売られているでしょう。

だいたい、東日本では、「むぎこがし」、西日本では、「はったい粉」と呼ぶようですが、「こうばし」「きなこ」が、看板商品として売られている店が存在している事が懐かしくも嬉しかっただけの事なのです。

下の写真を見られればお分かりのように、中には黒砂糖のブロックや氷砂糖といったものもおいてあるようです。

表に置いてあるのは営業用(配達、仕入れ)の自転車なのでしょう。

昔は太いタイヤに頑丈な荷台に太い黒のゴム紐が巻かれたものが多くの街角で活躍していたものです。

戦後、シンガポール攻略戦に活躍した銀輪部隊の話がされていましたが、その延長上に、丸石自転車、ツバメ自転車、宮田自転車、セキネ自転車が造られたのでした。

戦後直ぐは自転車しか交通手段がなく、一台の自転車が公務員の一ケ月分の給料でようやく買えたといった話を先輩たちから聴かされていたものです。

212-2

 このお店は柳川市でも市街地と農村部の境にあるのですが、確かに、仕入れと、加工、販売を考えれば、そのような場所が最適だったはずです。

 そこに、「町矢加部」という面白い地名があるのですが、この話は別稿とする事にしましょう。

そう遠くない将来、この店も何時かは閉められてしまうのかも知れませんが、2015年の梅雨の合間に得た人生の宝石のようなひと時でした。

と、ここまでは書いたのですが、どうも気になるのです。

ハッタイ粉=「コウバシ」とは言い切れないのです。

やはり、「コウバシ」には地方的なバラつきがあるようです。

ハッタイ粉の別名が麦こがしであるように大麦が原料なはずなのですが、一部には「コウバシ」は玄米を原料とするとするものが多々認められるのです。

実は写真のお店の「コウバシ」も玄米加工によるものです。

これについては多くの実例を踏み確認したいと思います。といっても実例自体が少ないため、「コウバシ」と呼ぶエリアを中心に数例、十数例確認すれば済むことですが、多少の時間が必要になります。


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