スポット175 中津市耶馬溪町金吉の土砂崩落はなぜ起きたのか! “雨も降っていないのに…?”
20180412
太宰府地名研究会 古川 清久
今回、江州伊吹山一帯から京丹後、丹後~丹波に掛けて十(車中)泊十一日の神社、古墳調査に入り戻ってくる途上において豊前の耶馬溪で晴天下の大崩落災害の情報が飛び込んできました。
地名研究会の研修所がある大分県日田市天瀬町の隣町のようなところが耶馬溪町です。
本来は遠回りでも宇佐経由で戻るつもりだったのですが、何故か山国川を右に入り耶馬溪町に向かう事になっていました。もしかしたらこのリポートを書いてくれと呼ばれた様な気がしないでもありません。
金吉地区 カーナビ検索 大分県中津市耶馬溪町金吉(地番不詳)20180412午前の現地
まだ、発生したばかりで情報が不足していますが、ネット・ニュースから幾つか拾ってみましょう。
11日午前3時50分ごろ、大分県中津市耶馬渓町金吉(かなよし)で「裏山が大規模に崩落し、家が土砂に埋まっている」と市消防本部に通報があった。県警や市などによると、山の斜面が幅約200メートルにわたって崩落。民家4棟が土砂にのまれ、3世帯の住民6人と連絡が取れなくなった。県は災害警戒本部を設置し、自衛隊に災害派遣を要請。自衛隊員や警察、消防など約600人態勢で救助活動を進めた。県警は午後1時すぎ、6人のうち会社員岩下義則さん(45)を現場から発見し、死亡を確認したと発表した。
県警によると、義則さんの死因は圧死。残る5人の女性の安否は分かっていない。山崩れに巻き込まれた4棟のうち、1世帯4人は逃げ出すなどして無事だった。ほかにけが人や不明者の情報はないという。
県によると、山崩れの規模は奥行き200メートル、幅200メートル、高さ約100メートル。近くを流れる金吉川に大量の土砂が達しているが、流れをせき止める状況ではないという。
市は11日午前8時、被害拡大の恐れがあるとして、現場近くの同町金吉梶ケ原地区の8世帯19人に避難勧告を出した。住民らが近くの公民館に避難している。
現場は、市中心部から南西約25キロにある山間部。金吉川を挟んで両側に山が迫り、川沿いに民家が点在している。県は昨年3月、土砂災害の危険があるとして、一帯を土砂災害防止法に基づく「土砂災害特別警戒区域」に指定していた。
気象庁によると、中津市耶馬渓町では6日に4・5ミリ、7日に1・5ミリの雨が降ったが、8日以降は計測可能な0・5ミリ以上の降雨は観測されていない。
消防庁を通じた大分県の要請を受けて11日、福岡県はパワーショベルを含む緊急消防援助隊24人を福岡市から現地に派遣した。熊本県や北九州市も救助隊を送った。
大分県は12日から、金吉川沿いで土砂災害が発生する恐れのある危険箇所67地点について、目視による緊急点検を実施する。
=2018/04/12付 西日本新聞朝刊=
さてここから本題に入ります。
この間、朝倉~日田に掛けての豪雨災害について書いてきました。これもその延長上の話になります。
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何故だろうとお考えかも知れませんが、今回の青天の霹靂ならぬ星空の土砂崩落災害もこの針葉樹の人工林が原因なのです。トップの崩落現場写真の左右をご覧ください。危険極まりない人工林が急傾斜地に乗っかっているのです。しかし、もっと傾斜が急な山頂部に近い所の広葉樹はそのまま残り、人工林を中心に全体が落ちている事は一目瞭然にお分かり頂けるのではないでしょうか?
崩落したものが針葉樹の人工林であることは剝き出しとなったマッチ棒状の樹木からも見て取れますね
雨も降っていないのに何故こんな災害が起こったのか?と、行政は元より御用学者もマスコミもほとんど理由が分からず気が付いておられないようです。
原因は、小泉竹中改革とかいう国民所得の半減政策によって在来工法による住宅需要が消失し、鉄とコンクリートとガラスとプラスティックに僅かな外材で造られるマンションによって需要が消えてしまったことから、全く売れずに放置された杉、桧の類が、樹齢が上がり重量を増す一方で急傾斜地に放置され崩落する順番待ちになっている事なのです。
針葉樹の人工林は腐葉土を生み出さない事から全く生物を育みません。このため人工林地は栄養を失い続け下草も生えず、同時に土壌を流出させて表土を失い続けているのです。結果、土被りが少ない上に根を張らない針葉樹が重量を増しながら崩落への条件を増大させ続けているのです。
そうした中、私は災害発生の数日前には京丹後辺りにいたのですが、災害発生の前日まで強い西風が二~三日間ほど吹きまくっていたのです。
直ぐに林業家で「森大学」のブロガーでもある平野虎丸氏に連絡を取りました。虎丸氏は開口一番、「昨日ブログに書きました」とのことでした。当方も雨でなければ風だろうと考えていましたが、予想が同方向で一致していたのでした。ひぼろぎ逍遥にもリンクを張っていますのでお読み頂きたいと思います。以下引用。
2018年04月11日15:57 カテゴリ九州山地の惨状防災
大分県中津耶馬渓 山崩れで4棟被害 5名不明 一人死亡
平野虎丸です。ご訪問ありがとうございます。
きょう、テレビニュースで大分県耶馬溪の土砂崩れを知り、ネットで写真を見てみましたが、案の定、成長したスギ山が崩落していました。
雨も降らないのに、なぜ?という声も聞かれます。
専門家と言われる人々は、地盤や地質、地下水のせいにしているようですが、私は、「今回は風」が原因だと思います。
大分県や熊本県では台風や強風による風倒木を経験しています。
挿し木スギは根が横に張り浅い為、大雨ばかりでなく、強風でも倒れやすくなっています。
浅い植木鉢に植えられた背丈の高い木ではよくあることです。
今回、西日本新聞の記事によれば、64歳の女性が、「竜巻のような突風で木が揺れていた。恐ろしかった」と言っています。
このような状況は今後、日本全国でどこでも起こり得ます。
原因は、
1、植林した場所が悪い。今回は30度の急傾斜地であり、土砂災害警戒区域であった。
2、根の浅い挿し木であり木が成長していた。
3、地質が悪い。
4、そこに突風が吹いた。
今後の土砂崩れ対策
1、急斜面にある人家の裏山の成長したスギは早めに伐採する。
2、今後、急斜面や沢沿いには植林しない。
3、素人が指導するお役所林業を廃止する。
土砂崩れがご心配な方は、ぜひ、私にご相談ください。
現場を見て土砂崩れ診断を行います。
電話は090-2082-6618です。
崩落地横の左右 今後も大風程度で崩落する可能性有 この人工林が6人もの人命を奪った
冒頭の写真をご覧頂ければお分かりのとおり、崩れたのは針葉樹であり、多少とも歯止めになろうとした僅かに残された広葉樹ですが、皆伐して植林しているのですから崩れるための順番待ちになっているようなものなのです。
そもそも、このような脆い急傾斜地に杉を植えるのが間違いで、崩して下さいと主張しているようなものなのです。農水省も林野庁も県林業課から役場の林業係も森林組合も危険と分かって放置しているとしか言いようがありません(馬鹿の4乗~5乗)。
覆われている広葉樹と表土が破壊されれば崩れてくるのは当たり前の事なのです。
そのうち、全国でこのような崩落が始まれば、危険な人工林を処理しようと言う話も出て来ることでしょう。しかし、それまでには今後とも多くの人命が失われ奪われることになるでしょう。特に耶馬渓は危険な場所なのです。
それはともかく、今度は地名から説明して見ましょう。
まず、この谷の奥にはすっぽんの里としても知られた伊福温泉があります。
確か、十年も前に地名研究会の泊まり込みトレッキングで訪れた事がありましたが、当然にもテーマは製鉄でした。
「伊福」自体が近江の「伊吹山」と同様の製鉄に絡むもので(谷川健一「白鳥伝説」)、今回崩落した地名が「金吉」地区なのです。それにここには「梶ケ原」という小字かしこ名(?)もあるのです。まだ、聴き取りもできていませんが、「金吉」はたたら製鉄で金儲けをした事を記念したものでしょうし、「梶ケ原」の「梶」は鍛冶屋の「鍛冶」の置換えであるはずなのです。
事実、福岡県うきは市には「伊福」姓の元鍛冶屋さんの一族もたくさんお住まいになっておられます。さて、当会のメンバーには現役の気象予報官がおられます。
この話をすると「崩落前の二日ほど強い西風が吹いていましたからね…」と言われていました。
どうやら豪雨災害ばかりではなく大風が吹いても崩落してくるような状況を造り出した戦後の拡大造林政策(林野行政)には新たな悩みがでてきたようです。
普通の雨を史上存在しなかったような超豪雨災害の様に宣伝し、自らの責任を天災でごまかし逃げ回ってはいるのですが、そのうち財政が破綻すれば、周囲を伐採し自ら人工林に火を着け処分せざるを得なくなる事もありうるのです(経済的にはこちらの方が搬出もせず仮置きの必要もなく遥かに効率的なのです)。
末端の小役人どもは調教されていますので人工林の植林を良い事と信じ込んでいますが、悪行を承知のうえでやらせている中央の林野庁官僚どもは今後も言い逃れて退職金を懐に逃げおおせる事でしょう。
凡そ林野行政など学問でも産業でもないのです。その証左が再植林し数世代後の悲劇の準備をしている事です。彼らは国家のためにも国民のためにも国土のためにも国民経済のためにも働いていないのです。
念のために気象庁のアメダス・データで4月10~11日風を確認しておきます。
耶馬渓も観測ポイントではあるのですが、風は出ていないため日田市を取りました。平野部ですので風はそれほどではない様に見えますが、耶馬渓のような谷地では風向により凝集される事は言うまでもありません。
林野行政により犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りします