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234 日之影町見立渓谷から山上楽園へ ② “売れない針葉樹林地に火を掛けろ”

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234 日之影町見立渓谷から山上楽園へ ② “売れない針葉樹林地に火を掛けろ”

20150814

久留米地名研究会 古川 清久


この写真は 233 日之影町見立渓谷から山上楽園へ ① で取上げた見立渓谷へと入る県道6号線を進む途上で見掛けた現場を写したものです。


234-1

針葉樹が切り出されたばかりの造林地(上)と放置され自然林が復活し始めた旧造林地(下)


234-2

宮崎県下の土砂災害の全貌


以下は2006年に「有明海諫早湾干拓リポート」として「環境問題を考える」のサブ・サイトに連載されたものですが、なお、意味を失っていないと考えられるので再掲するものです。


154 針葉樹林大崩壊(宮崎県内の全ての川が土砂で埋まる)


 県北では高千穂鉄道が運行停止状態に陥った(既に一年が経過している)事に象徴されるように、高千穂町岩戸地区、椎葉村 上椎葉、栂尾地区、諸塚村、旧南郷村松の内地区、旧西郷村塚原村上下流域で顕著です。特に、旧西郷村塚原ダム上流の竹の八重地区の対岸では、巾一五〇メー トル、高低差三〇〇メートル、ダム下流五〇〇メートル地点では、巾三〇〇メートル、高低差二七〇メートルという想像を絶する巨大崩落が起きています。
 県南では、山之口町の国道269号線沿いで、また、宮崎市の南に位置する田野町の 鰐塚山北側斜面で巾一五〇メートル、延長二七〇メートルで崩落が起こり、五〇センチ級の売れもしない杉もろとも土砂が押し流され、無意味な施設でしかな かった「鰐塚渓谷いこいの広場」が渓谷もろとも大規模に埋まってしまったのです。もはや、林政の恥知らずも極限まで到達した感じがします。
 信じ難いことですが、ここには推定で五〇〇万立方メートルという凄まじい土砂が流れ出し堆積していると言われています。これは過積載の大 型ダンプが一度に運び出せる土石の量が五立方メートル程度ですから、百台で一万回という考えられない数字になります。恐らく処分場もないでしょうが、搬送 するにしても、一日一〇回程度と考えれば、フル稼働で一〇〇〇日、三年はかかり、後追いの新たな災害の発生を考えれば、ほぼ、処理する事が不可能な規模に なります。凡そ、県営クラスの大型ダムの容量に匹敵しますので、まあ、当局も搬出は諦めていることでしょう。現在は、パチンコの玉詰まりのように河川邂逅 部で、ある程度堆積しているのでしょうが、これが全量流れ出したとしたら、川が、深さニメートル、巾一〇メートル埋まったとして、一メートルで二〇立方 メートル、一キロで二万立方メートル、その二五〇倍、実に延長二五〇キロ分の土石の量が後に控えている事になるのです。
 "宮崎県内の全ての川が土砂で埋まる"というタイトルが決して誇張ではない事がお分かりになるでしょう。しかも、崩壊個所はここだけではないのです。田野町の鰐塚山北側斜面は、全体のほんの一部でしかないのです。
 今、考えれば、私達が足早に通り抜けたルートは、まだまだ、比較的被害の小さな場所だった事が分ります。これが国の宝と称せられた数十年にわたる拡大造林のもたらしたものなのです。まさに、過剰供給の飫肥杉に火を着けろ!火を掛けろ!です。


全文をお読みになりたい方は154 針葉樹林大崩壊(宮崎県内の全ての川が土砂で埋まる)をネット上で探して下さい。画像と共に空恐ろしい実体が把握できると思います。


 良く、“山の木をみだりに切ってはならない…洪水が起こる…”と言われるのですが、崩壊し土壌を喪失した造林地にまで再び針葉樹の苗を植えさせるという奇行が行われるのですが、この背景にも官僚どもの無知に基づく開き直りと補助金へのあやかりが見て取れます。

 前掲の上の写真は売れないまでも伐採処分された造林地であり、下のそれはもはや植林を放棄し自然林(雑木林)が再生し始めた旧造林地なのです。

 木を切るな!の罵声にも関わらず放棄された造林地が増えているのが実情で、苦労して植林しても木は売れない、間伐、枝打ちも森林組合などに委託すれば金を注ぎ込まされ回収できない…という実態を経験した地主達がもうコリゴリと続出しているからなのです。

 売れない針葉樹をこのような傾斜地に載せ続けている事の方がよほど危険極まりないものであって、伐採され陽が入り、数年を待たずして最低限の覆いが掛けられ三十年もすれば元の二次林が再生し、初めて土砂の流出が止まるのです。

 売れもしない急傾斜の造林地からは土壌の流出は止まらないのであり、いずれ歯槽膿漏と同様に地山がそのまま崩れ落ちる事になるのです。

 これが、大笑いの“山の木をみだりに切ってはならない…洪水が起こる…”の実情であり、苦労して植林し手を入れ続けた杉、桧が全く金にならなかった事に懲りるだけ懲りた結果が伐採後の放置林の激増なのです。

 このように経済原則が貫徹することを持って、ようやく再生林の増大が始り、河川への土砂の流入に歯止めが掛る事になるのです。

 豊かな川に土砂を押し流し続けた「拡大造林政策」の延長上に胡坐をかき暴利をむさぼった林野行政でしたが、この放置林地の造化傾向には歯止めが掛けられないはずなのです。

 林野行政関係者には、なお、“針葉樹と広葉樹の保水力に差はない!“などと強弁する方がおられますが、その実験に使用された造林地の土壌そのものも数百年の時の流れを経て広葉樹の森が培った自然林を伐開し数十年維持された造林地での実験だった事を忘れてはならないのです。

 結局、物事の表面だけしか見ていないのであり、放置林の増大こそ一縷の希望といえるでしょう。

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